終身建物賃貸借契約とは?不動産投資に活用するメリット・デメリットを解説! | 全国の不動産投資・収益物件|株式会社リタ不動産
終身建物賃貸借契約とは? 不動産投資に活用するメリット・デメリットを解説!
2025-12-10

終身建物賃貸借契約は、賃借人が生きている限り存続し、死亡時に終了する、1代限りの賃貸借契約です。高齢の賃借人は、余生を同じ家で住み続けられる一方、賃貸人は、賃借人の死亡に伴って賃貸借契約が自動的に終了することから、契約終了後に発生する手続きをスムーズに進められます。
このように終身建物賃貸借契約は賃借人・賃貸人双方にメリットがある制度です。しかし、制度自体の知名度が低いという社会的背景もあり、不動産投資の実務で活用している賃貸オーナーは多くありません。
そこで本記事では、終身建物賃貸借契約の基本知識のほかに、終身建物賃貸借契約を不動産投資に活用するメリット・デメリットについて解説します。終身建物賃貸借契約の手続きの流れや、終身建物賃貸借契約を中途解約するための条件についても解説するため、参考にしてください。
目次

終身建物賃貸借契約は、借家人が生きている限り存続し、死亡時に終了する1代限りの賃貸借契約です。「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」に基づき、都道府県知事等の認可を受けた事業者だけが利用できます。
終身建物賃貸借契約を使うと、賃借人は、生涯同じ家に住み続けられるため、安心して暮らすことができます。一方、賃貸人は、賃借人の死亡に伴い契約が安定的に終了するため、残置物の処分をはじめとした契約終了後に発生する手続きをよりスムーズに進められます。
入居者の要件
賃借人が終身建物賃貸借契約の対象となる物件に入居するためには、次の要件を満たす必要があります。
- 高齢者(60歳以上)であること
- 単身または同居者が高齢者親族であること(配偶者は60歳未満も可)
普通賃貸借契約との違い
終身建物賃貸借契約と普通賃貸借契約には、次のような違いがあります。
| 終身建物賃貸借契約 | 普通建物賃貸借契約 | |
|---|---|---|
| 契約の方法 | 公正証書などの書面による契約に限る | 書面による契約でも、口頭による契約でも可 |
| 期間または期限 | 賃借人の死亡に至るまで | 当事者間で定めた期間(1年以上)または期間の定めなし |
| 契約の更新 | ー | 正当事由がない限り更新される |
| 借賃増減請求権 | 借賃の額の増減を請求できる*賃料を改定しない特約があるときは増減を請求できない | 借賃の額の増減を請求できる*賃料を増減しない特約があるときは増減を請求できない |
| 賃借人からの中途解約の可否 | 1〜4の場合に、賃借人から解約の申入れを行うことができる。
|
|
| 相続の有無 | なし*賃借人の死亡後の同居配偶者などの一時居住(1カ月)及び申し出に基づく継続居住の契約は認められる | あり |
終身建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約の違いは、主に「期間・期限」と「相続の有無」にあります。
たとえば、「期間・期限」では、普通建物賃貸借契約が「当事者間で定めた期間または期間の定めなし」なのに対し、終身建物賃貸借契約が「賃借人の死亡に至るまで」となっています。
一方、相続人に付与される賃貸借契約の相続権については普通建物賃貸借契約では認められるのに対し、終身建物賃貸借契約では原則として認められません。
この点を踏まえると、本来、一身専属的な契約ではない賃貸借契約は、終身建物賃貸借契約を締結することで、被相続人のみに帰属する一身専属的な契約に転換するといえるでしょう。
【2025年10月1日スタート】認可手続きが簡素化
高齢者住まい法の改正に伴い、終身建物賃貸借の認可手続きが2025年10月1日から簡素化されました。
これまでは、「住宅ごと」に都道府県知事などの認可を受ける必要がありました。ただし、法改正後は、事前に「事業者」として認可を受ければ、実際に賃借人と終身建物賃貸借契約を締結するまでに住宅を改修したうえで、対象となる住宅を届け出ればよいことになりました。

終身建物賃貸借契約を不動産投資に活用するメリットには、次の3つがあります。
- 長期入居につながりやすい
- モデル契約条項とあわせて活用すると、遺留品の処理等を円滑に進めやすくなる
- 数十年分の賃料を「前払金」として一括受領できる
これらのメリットを把握しておけば、終身建物賃貸借契約の活用を前向きに検討しやすくなるでしょう。ぜひ参考にしてください。
長期入居につながりやすい
終身建物賃貸借契約を不動産投資に活用すると、賃借人が死亡するまで契約が続くため、長期入居につながりやすいメリットを得られます。
不動産投資を成功させるためには、安定した賃料収入につながる長期入居者の確保が欠かせません。長期入居者を確保できなければ、退去時の清掃や広告宣伝にかかる費用が頻繁に発生するだけでなく、賃料を得られない空室状態が長期化するおそれがあるでしょう。
この点、終身建物賃貸借契約によって長期入居が実現すれば、安定した賃料収入を得られ、不動産投資が成功する可能性が高くなるでしょう。
モデル契約条項とあわせて活用すると、遺留品の処理等を円滑に進めやすくなる
終身建物賃貸借契約は国土交通省の「残置物の処理等に関するモデル契約条項(以下、モデル契約条項)」とあわせて活用すると、遺留品の処理などを円滑に進めやすくなります。
モデル契約条項は、賃借人と受任者との間で締結する賃貸借契約の解除と残置物の処理を内容とした死後事務委任契約などにかかる契約条項です。この条項を終身建物賃貸借契約に盛り込んでおくと、高齢の賃借人が死亡した際に、受任者による迅速な賃貸借契約の解除や遺留品の処理などが可能となります。
モデル契約条項は本来、終身建物賃貸借契約とは別に締結するものですが、国交省が公開している終身建物賃貸借標準契約書には、モデル契約条項がはじめから盛り込まれています。そのため、モデル契約条項を活用したい賃貸オーナーは、国交省が公開する終身建物賃貸借標準契約書を活用するとよいでしょう。
モデル契約条項については、下記記事でも詳しく解説しているため、ご参照ください。
数十年分の賃料を「前払金」として一括受領できる
高齢の賃借人と終身建物賃貸借契約を締結しておけば、賃貸人は終身にわたって受領すべき賃料の全部または一部を「前払金」として一括受領できます。
前払金は、賃借人の年齢や想定される居住年数をもとに計算され、全額を一括で受け取ることが可能です。一部を前払いとして受け取ったうえで残額を分割する形でも受け取れます。
このように終身建物賃貸借契約を活用した賃貸人は賃料の全額または一部を最初に受け取れるため、将来の家賃滞納リスクを激減できるでしょう。
ただし、賃借人が前払金で賃料の支払いを完了している反面、想定居住年数よりも長く居住するケースでは、賃貸人が想定居住年数から超過した分の賃料を請求することは認められません。賃貸人は毎月の共益費や追加サービスの費用を賃借人に請求できるものの、賃料自体は支払い済みとみなされることから、賃料を追加請求できないのです。
つまり、前払金制度を利用すると、賃借人が長生きすればするほど賃貸人側の損失が大きくなる可能性があります。
そのため、終身建物賃貸借契約では、前払金に想定居住年数の超過をあらかじめ見越した上乗せ分を超過することが認められています。しかし、制度の趣旨を踏まえると、大幅な上乗せは慎重になったほうがよいでしょう。

終身建物賃貸借契約を不動産投資に活用するデメリットには、次の3つがあります。
- 自治体の認可を得る必要がある
- バリアフリーの費用が発生する
- 更新料を取れない
事前にデメリットを把握しておくことで、賃借人との終身建物賃貸借契約の締結によって受ける不利益を回避することができます。ぜひ参考にしてください。
自治体の認可を得る必要がある
賃貸人は終身建物賃貸借契約を活用するにあたり、自治体へ事業認可申請書を提出し、認可を受ける必要があります。
認可基準は自治体によって異なるため、事前によく確認しましょう。一例として紹介する東京都の認可基準は、次のとおりです。
【主な事業の認可基準】
1. 終身にわたって受領すべき家賃の全部又は一部を前払金として一括して受領する場合には、前払金の算定の基礎及び返還債務の金額の算定方法が書面で明示されるものであり、かつ、事業者が返還債務を負うことになる場合に備えて、必要な保全措置が講じられるものであること。
2. 賃貸の条件が、権利金その他の借家権の設定の対価を受領しないものであること。
3. 工事完了前に、敷金を受領せず、かつ終身にわたって受領すべき家賃の全部又は一部を前払金として一括して受領しないこと。
【住宅の基準】
1. 1戸あたりの床面積が原則25㎡以上(居間、食堂、台所、浴室等、高齢者が共同して利用するために十分な面積を有する共同の設備がある場合は18㎡以上)であること。
*既存建物を改修して住宅を整備する場合、各住戸の面積基準は次のとおりです。
1-1. 1戸あたりの床面積は25㎡以上→18㎡以上(既存建物を改修してサービス付き高齢者向け住宅を整備する場合は、25 ㎡以上→20 ㎡以上とする)
1-2. 居間、食堂、台所、浴室等、高齢者が共同して利用するために十分な面積を有する共同の設備がある場合は、18㎡以上→13㎡以上
2. 加齢対応構造等が高齢者の居住の安定確保に関する法律施行規則第38条第1項第1号〜9号に掲げる基準に適合するものであること。
3. 賃借人が共同して利用する居間、食堂、台所その他の居住の用に供する部分を有する賃貸住宅(共同居住型賃貸住宅)の場合は、以下の基準に適合するものであること。
3-1. 専用居室の入居者を1人とすること
3-2. 専用居室の床面積が9㎡以上であること
3-3. 共用部分に居間、食堂、台所、便所、洗面設備、洗濯室、浴室等を設けること
3-4. 便所、洗面設備、浴室は、居住者概ね5人に1箇所の割合で設けること
バリアフリーの費用が発生する
賃貸人は、終身建物賃貸借契約を利用するため、一定のバリアフリー基準をクリアしなければなりません。
バリアフリー基準をクリアできなければ、施設をバリアフリー化するためのリフォーム費用が生じます。これを踏まえ、賃貸人はリフォーム費用の発生を計算したうえで、事業計画を着実に遂行する必要があるでしょう。
ただし、バリアフリー化の費用については住宅セーフティネット制度による補助金をはじめとしたリフォーム補助金を活用することで、減額できる可能性があります。一度補助金の公式サイトなどで要件を確認し、要件を満たしている場合は、リフォーム補助金を利用するとよいでしょう。
更新料を取れない
終身建物賃貸借契約を活用すると、賃貸借契約の契約更新自体がなくなるため、更新料を賃借人から取れないというデメリットが発生します。
普通建物賃貸借契約では、契約期間を2年間と設定したうえで、2年が経過すると更新手続きを進めると同時に、家賃の1カ月分から1.5カ月分に相当する更新料を賃借人から徴収するのが一般的です。
しかし、終身建物賃貸借契約を活用すると、賃貸人は不動産投資で重要な収益源となる更新料を徴収できません。更新料を徴収できないことによる不利益は、終身建物賃貸借契約を締結する賃借人が増えれば増えるほど、大きくなる可能性があるため注意が必要です。

終身建物賃貸借契約の手続きは、次の流れに沿って進めていきます。
- 事業者として認可申請する
- 対象となる住宅を届け出る
- 賃貸人と終身建物賃貸借契約を締結する
手続き自体は複雑ではないため、ぜひ参考にしてください。
事業者として認可申請する
賃貸人はまず事業者として地方自治体に認可申請をしなければなりません。
認可申請書に記載が必要な情報は次のとおりです。
- 事業者の名称・氏名、住所
- 賃借人の資格に関する事項
- 賃貸の条件に関する事項
- 賃貸住宅の管理の方法
- 事業が基本方針等に照らして適切なものである旨
認可申請書の提出に際しては、基準に適合する賃貸住宅で終身賃貸事業を行うことの誓約書などを添付する必要があります。
認可申請書を提出後、審査が通れば、地方自治体から事業認可通知書が届きます。
なお、終身賃貸事業者の認可にかかる標準処理期間は1カ月となっています。
対象となる住宅を届け出る
入居者が確定後、賃貸人は実際に終身建物賃貸借をする時までに対象となる住宅の届け出を行います。
終身建物賃貸借にかかる賃貸住宅届出書に記載が必要な情報は次のとおりです。
- 住宅の位置
- 住宅の戸数
- 住宅の規模・構造・設備
- 住宅整備の実施時期
- 前払家賃に関する事項
賃貸住宅届出書の提出に際しては、各階平面図や間取り図などを添付する必要があります。
工事が必要な場合は、地方自治体に届け出るタイミングで、対象住宅の新築建設工事や改修工事を進めていきます。
賃借人と終身建物賃貸借契約を締結する
賃貸人は最後に賃借人と終身建物賃貸借契約を締結します。
契約の締結に際しては、国土交通省のウェブページで公開されているひな形を活用するとよいでしょう。ただ、ひな形が実務上そのまま使えない場合もあるため、正式な契約書については法律の専門家に作成を依頼するとよいでしょう。

ここからは、終身建物賃貸借契約を中途解約するための条件について、賃貸人、賃借人双方の立場から解説します。
賃貸人からの解約
終身建物賃貸借契約で賃貸人から解約できるのは、次の条件に合致した場合です。
- 住宅が老朽、損傷などにより、適切に維持するのが困難になった場合
- 賃借人が住宅に長期間にわたって居住しなくなり、住宅を適正に管理するのが困難になった場合
これらの条件に合致する場合、賃貸人は知事の承認を受けたうえで賃借人に契約の解約を申し入れできます。
ただし、賃借人が家賃を支払わないといった契約上の義務を履行しない場合、知事の承認を受ける必要はありません。
賃借人からの解約
終身建物賃貸借契約で賃借人から解約できるのは、次の条件に合致した場合です。
- 老人ホームへの入居や親族との居住のための場合:1カ月前の申し入れで解約可能
- 任意の解約の場合:6カ月前の申し入れで解約可能
これらの条件以外にも、賃貸人が管轄の自治体から改善命令を受けた後、依然として違反状態が続いている場合も、賃借人からの契約解除が可能です。
少子高齢化の進展に伴って賃借人における高齢者世帯の割合の増加が見込まれるなか、終身建物賃貸借契約は、賃借人の高齢リスクを排除してくれる方策になり得ます。
現時点で終身建物賃貸借契約を採用しているのはサービス付き高齢者向け住宅のオーナーばかりであり、一般の共同住宅の賃貸オーナーが実務で活用するのは珍しいとされます。
それでも、終身建物賃貸借契約は、高齢の賃借人を受け入れる際のリスクヘッジとして、非常に有用です。住民の高齢化率が高い地域で収益物件を経営する賃貸オーナーを中心に、知っておいて損はないでしょう。
「お客さまの利益のために努力することが、自らの利益につながる」という考え方ですので、押し売りをはじめとしたこちら都合のアプローチは一切行っていません。
「お客さまの利益のために努力することが、自らの利益につながる」という考え方ですので、押し売りをはじめとしたこちら都合のアプローチは一切行っていません。
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