配偶者の住まいと老後資金を守る「配偶者居住権」とは? シニア投資家が知っておくべき基礎知識 | 全国の不動産投資・収益物件|株式会社リタ不動産
配偶者の住まいと老後資金を守る「配偶者居住権」とは? シニア投資家が知っておくべき基礎知識
2026-07-27

「自宅を含めて複数の物件を持っているが、不動産の比重が大きい分、自分の死後、パートナー(配偶者)が自宅を手放さずに済むか、老後の生活資金を確保できるか不安……」
複数の収益物件を所有している賃貸オーナーには、残された配偶者の住まいや生活に関する切実な悩みを抱えている方も少なくないはずです。
そんなシニアの賃貸オーナーに知っていただきたいのが、民法上に規定された居住権の一つである「配偶者居住権」です。これは夫婦の一方が亡くなった際、残された配偶者が被相続人の自宅に住み続けられる権利を意味します。
この権利を行使すると、自宅の所有権がほかの相続人や第三者に移っても、配偶者は引き続き自宅に住み続けられます。さらに、自宅の評価額を「居住権」と「所有権」に分けることで、配偶者が預貯金などの流動資産を受け取りやすくなるメリットもあります。
本記事では、配偶者居住権の定義や成立要件、メリット・デメリットについて解説します。相続対策を見直す際の判断材料として、ぜひ参考にしてください。

配偶者居住権は夫婦の一方が亡くなった場合に、残された配偶者が生存中または一定の期間、無償で被相続人が所有していた建物を使用または収益できる権利です(民法第1028条)。夫婦の一方が亡くなった場合に、残された配偶者の居住権を守るため、2020年4月1日以降に発生した相続から新たに認められました。
配偶者居住権の存続期間は、原則として配偶者が生存する終身までです。しかし、遺産分割協議や遺言に別段の定めがある場合や、家庭裁判所の分割裁判で別段の定めをした場合は、その定めで規定した期間までにすることができます。
配偶者居住権は一身専属的な権利
配偶者居住権は、配偶者固有の一身専属的な権利であり、第三者に譲渡できません。
ただし、建物に所有者がいる場合、配偶者は所有者の承諾を得ることで、第三者に貸し出して賃料収入を得ることは可能です。つまり、配偶者居住権は強い権利である反面、所有者や第三者に対して配慮が必要な権利だといえます。
また、配偶者は、居住建物の使用・収益に必要な修繕ができます。ここでいう修繕とは、台風で破損した屋根や、水漏れが続く水道管を修理する行為が該当します。
より詳細な法的規則を確認したい場合は、民法第1032条から第1036条をあわせて参照すると理解が深まります。
配偶者居住権の創設の背景にある長寿社会の到来
配偶者居住権の創設の背景にあるのは、長寿社会の到来があります。
社会の高齢化によって平均寿命が延びたことから、夫婦の一方が亡くなった後、残された配偶者が長期間生活を継続するケースが増えました。その際には、配偶者が住み続けた住居で生活を続けるとともに、老後の生活資金として預貯金や不動産といった資産を確保しなければなりません。
そうした社会環境の変化を踏まえ、政府は遺言や遺産分割の選択肢として、配偶者居住権を創設したというわけです。
「配偶者短期居住権」との主な違いは期間や登記の可否
「配偶者短期居住権」は、被相続人の所有する建物に居住していた配偶者が引き続き、一定期間、無償で建物に住み続けられる権利です。
配偶者居住権と似ていますが、配偶者短期居住権はその名のとおり、配偶者に付与される居住権の期間が短く、遺産分割が完了するまで、または相続開始から6カ月が経過するまでのいずれか遅い日までに限られます。そのため、配偶者短期居住権を付与された配偶者は、無償で住んでいる間に、次の転居先を探す必要があります。
配偶者短期居住権は、相続開始時に被相続人所有の建物に無償で居住していた法律上の配偶者であるという要件を満たせば、相続開始と同時に自動的に発生します。配偶者居住権と異なり、遺言や遺産分割協議は不要です。
また、配偶者短期居住権は配偶者居住権と異なり、登記ができません。そのため、建物が第三者に譲渡された場合、配偶者は第三者に対して、配偶者短期居住権を行使できません。ただし、配偶者は建物を譲渡した者に対し、債務不履行に基づく損害賠償を請求できます。

配偶者居住権が成立するための要件は、次の3つです。
- 相続人が法律上の配偶者である
- 相続開始時点で配偶者が被相続人の所有する家屋に住んでいる
- 遺産分割、遺贈、死因贈与、家庭裁判所の審判のいずれかにより配偶者居住権を取得した
実際に配偶者居住権が成立しているかどうかの判断は、弁護士をはじめとした専門家に協力を仰ぐことをおすすめします。
それでも、物件オーナー自身が知っておくことに越したことはありません。ぜひ参考にしてください。
相続人が法律上の配偶者である
配偶者居住権を取得できるのは、被相続人と法律上の婚姻関係にあった配偶者だけです。
そのため、内縁関係や事実婚の配偶者は、配偶者居住権を取得できません。もちろん、配偶者以外の第三者も、取得不可です。
相続開始時点で配偶者が被相続人の所有する家屋に住んでいる
原則として、相続開始時点で配偶者が被相続人の所有する建物に住んでいる必要があります。被相続人と別居していた場合、配偶者は配偶者居住権を取得できません。
また、この要件に付随して、居住建物が被相続人の配偶者以外の第三者と共有になっていないことが必要です。生前に配偶者以外の第三者と共有になっていれば、配偶者は配偶者居住権を取得できません。
遺産分割・遺贈・死因贈与・家庭裁判所の審判のいずれかにより配偶者居住権を取得した
配偶者居住権を取得するには、配偶者は遺産の分割、遺贈、死因贈与、家庭裁判所の審判のいずれかの方法によって配偶者居住権を取得している必要があります。具体的には、次のとおりです。
- 居住建物の所有者はほかの相続人に決定しても、配偶者に配偶者居住権を取得させる遺産分割協議が成立した
- 被相続人と生存配偶者の間に、被相続人死亡後、生存配偶者に配偶者居住権を取得させるとの死因贈与契約があった
- 生存配偶者に配偶者居住権を取得させるとの遺言があった

ここからは、配偶者居住面のメリット・デメリットについて解説します。
配偶者居住権のメリット
配偶者居住権を行使すると、配偶者は被相続人の死後もそのまま自宅に住み続けられます。
配偶者居住権が創設されるまでは、相続争いによって自宅を手放さざるを得ない配偶者も少なくありませんでした。この点、配偶者居住権は配偶者の居住権保護に特化した制度だといえます。
配偶者居住権を設定すると、配偶者が不動産以外の財産を受け取りやすくなるメリットもあります。自宅の評価額が配偶者居住権の評価額と不動産所有権の評価額に分けられる分、配偶者居住権の評価額が自宅全体の評価額を下回り、設定しない場合と比べて配偶者の自宅以外の取り分が増えるためです。
たとえば、夫が3,000万円(自宅1,500万円、預貯金1,500万円)の財産を遺して、妻と子ども1人が相続するとします。法定相続の原則に基づくと、妻が財産の2分の1、子どもが残る2分の1を相続するため、妻が自宅を相続する場合は法定相続分の充足によって預貯金を受け取れなくなります。
一方、配偶者居住権の評価額が仮に500万円だと仮定した場合、配偶者は最大1,000万円(1,500万円-500万円)の現預金を受け取れるようになります。つまり、設定しない場合と比べて配偶者は1,000万円多く預貯金を相続できるようになるのです。
配偶者居住権の設定がもたらすのは、単に配偶者が不動産以外の財産を受け取りやすくなるだけにとどまりません。配偶者の預貯金の取り分が増えるため、配偶者は他の相続人に代償金(*)を支払う義務を負いにくくなります。
(*)代償金:不動産など分割が難しい遺産の相続分が法定相続分を超えた場合、各相続人の相続分を公平にするために遺産を現物で取得した方が他の相続人へ支払う金銭
配偶者居住権のデメリット
配偶者居住権はあくまでも「家に住む権利」であるため、権利を行使した配偶者自身は自宅を譲渡・売却することはできません。
自宅の所有権を持つ配偶者以外の相続人が、第三者に自宅を売却することは法律上可能ですが、配偶者居住権が登記されている場合、買主もその権利に拘束されるため、買い手がつきにくく、実質的に売却が著しく困難になります。配偶者居住権の存在により、第三者が購入したとしても実際に住むことができないためです。
また、配偶者居住権を取得すると、固定資産税の納税通知書は建物の所有者に届きますが、配偶者はその相当額を通常の必要費として所有者に支払う義務を負います。必要費を支払えない場合は、支払いを建て替えた自宅の所有者から、必要費の支払いを求償される可能性があります。
このほか、配偶者居住権には、配偶者が高齢になればなるほど居住権の恩恵を受けにくい、設定手続きが複雑でわかりにくいといったデメリットがあります。

配偶者は遺産分割協議や遺言などで配偶者居住権を取得した後、建物の所有者と共同で管轄法務局にて配偶者居住権の登記手続きを申請します。
配偶者居住権の登記手続きの概要は、次のとおりです。
| 申請者 | 被相続人の配偶者と建物の所有者(共同申請) |
|---|---|
| 申請先 | 建物の所在地を管轄する法務局 |
| 必要書類 | 1. 登記申請書 2. 登記義務者の登記識別情報 3. 登記原因証明情報(遺産分割協議書や調停調書、審判書、遺言書など) 4. 被相続人の本籍の記載のある住民票の除票または戸籍の附票の写し ※登記上の住所・氏名と最後の住所・氏名が異なる場合、または被相続人の本籍と住所が異なる場合に限る 5. 登記義務者の印鑑証明書 ※3カ月以内に作成されたもの 6. 委任状 ※弁護士や司法書士などに登記手続きを委任する場合に限る |
留意点としては、建物の所有者が遺言者の登記名義のままになっている場合は、配偶者居住権の登記を申請する前に、相続等による所有権の移転登記を申請する必要があります。
また、家庭裁判所で行われる審判や調停で、配偶者が配偶者居住権を取得すると決まり、かつ建物の所有者に配偶者居住権の登記手続きが命じられた場合、配偶者は単独で登記申請することが可能です。
配偶者居住権の登記手続きにかかる費用
配偶者居住権の登記手続きにかかる費用は次の3つに分けられます。
1. 公的書類の取得費用
2. 登録免許税
3. 専門家への依頼費用
公的書類の取得費用は、住民票の除票や戸籍の附票の写し、印鑑証明書の取得などにかかる費用です。数百円から数千円の支出が発生します。
登録免許税は、登記申請に際して法務局を通じて国へ支払う税金です。配偶者居住権の設定登記では、発生する登録免許税は建物の固定資産税評価額の0.2%(1,000円未満の場合は1,000円)となります。
専門家への依頼費用は、登記手続きを司法書士や弁護士に依頼する際にかかる費用です。建物1件あたり10万円程度がかかります。
配偶者居住権は賃貸オーナーにとって、配偶者が不動産の相続によって預貯金の取り分が少なくなったり、代償金をほかの相続人に支払わなければならなかったりする場合に有効な法的手続きです。
一方で、配偶者が自宅を自由に売却できなかったり、租税公課を含めた必要費を支払い続けなければならなかったりするデメリットも存在します。そのため、賃貸オーナーは生きているうちにほかの相続人も交えて配偶者と話し合い、配偶者居住権を行使するかしないかを決めることが大切です。
配偶者居住権が自身の資産状況に合った選択肢かどうかは、具体的な数字をもとに判断する必要があります。まずは弁護士や税理士など、相続に強い専門家に相談することから始めてみてください。
「お客さまの利益のために努力することが、自らの利益につながる」という考え方ですので、押し売りをはじめとしたこちら都合のアプローチは一切行っていません。
「お客さまの利益のために努力することが、自らの利益につながる」という考え方ですので、押し売りをはじめとしたこちら都合のアプローチは一切行っていません。
TEL.03-5357-7757
〒107-0052
東京都港区赤坂3丁目20-6 PACIFIC MARKS赤坂見附4F
【営業時間】9:30~18:30
【定休日】土・日・祝
キーワード物件検索
Copyright (C) 全国の不動産投資・収益物件は株式会社リタ不動産 All Rights Reserved.
