BCPとは何の略? 不動産業における「事業継続計画」の策定手順を徹底解説! | 全国の不動産投資・収益物件|株式会社リタ不動産
BCPとは何の略? 不動産業における「事業継続計画」の策定手順を徹底解説!
2026-04-30

近年は、毎年のように大型台風や地震といった災害が発生しています。こうした自然災害による入居者の退去や修繕費用の増加を懸念している物件オーナーも少なくないでしょう。
そんな堅実派の物件オーナーにこそ知っていただきたいのが、「BCP」です。BCPとは、「Business Continuity Plan(事業継続計画)」を指します。これを策定しておくことで、緊急事態に陥った際にも管理物件や入居者に対してスムーズかつ的確な対応を取ることができます。
本記事では、災害発生時に迅速な被害拡大防止措置を取れるよう、不動産業におけるBCPの基本から具体的な策定手順、行動計画の検討事項までを徹底解説します。大切な資産を守る防衛策として、ぜひ参考にしてください。

BCPが指す事業継続とは、自然災害や事件・事故など有事の際でも、あらかじめ定めた手順や目標に基づいて、製品やサービスを供給し続ける取り組みのことです。事業継続を確実にするための具体的な対策には、装置や設備、施設といった代替手段の確保や、代替手段を実行するための要員の確保、手順の整備などが挙げられます。
これらの取り組みを実行可能な状態にするために作成されるのが、BCPです。BCPは、組織にとって期待されない事態が発生したときに、影響を受けた重要な業務を、可及的速やかに復旧し、継続させるための事業継続マネジメント(BCM)の一環として作成され、維持されます。
BCM(事業継続マネジメント)や従来の防災対策との違い
前述のとおり、BCPは、BCMの一部です。つまり、BCMを適切に運用するための計画がBCPといえるでしょう。
一方、防災対策は、災害そのものによる被害(人命・建物・設備など)をできるだけ最小化することです。身体・生命の安全確保と物的被害の軽減を目的としています。
防災対策に対し、BCPには、防災対策の目的に加えて、重要業務の継続や早期復旧が含まれます。つまり、防災対策は、BCPの一部と捉えられるでしょう。
BCPが重要視される背景にある災害リスクの増加
BCPが重要視される背景には、災害リスクの増加があります。
たとえば、地震に限っても、平成以降に国内で発生したマグニチュード6.7以上、震度6強以上の大地震は、1995年阪神大震災や2011年東日本大震災など枚挙にいとまがありません。

大規模地震は過去30年頻発している経緯から、特定地域に限らず、全国どこでも被災する可能性があります。実際、政府が発表する地震の発生確率は南海トラフ地震が70〜80%、首都直下地震が70%と推定されており、予断を許さない状態が続いているのが実情です。
災害リスクが高いのは、地震だけではありません。平均気温の上昇に呼応するように、全国的に大雨や短時間強雨の発生頻度も増加しています。実際、日降水量100㎜以上および200㎜以上の日数は、この100年でともに増加傾向が見られています。

このように災害リスクが顕在化していることから、BCPがより重要に考えられるようになっています。
大企業におけるBCPの策定率は76.4%
内閣府が2024年3月に公表した「令和5年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」によれば、BCPを策定済みの企業の割合は大企業が76.4%、中堅企業が45.5%でした。

このように大企業を中心に、BCPを重要視する企業が増加しています。実際、帝国データバンクが2023年5月に実施した「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2023年)」では、大企業のBCP策定率は、35.5%に上ります。
なお、大企業に対し、中小企業では、BCPの策定が思うように進んでいません。事実、帝国データバンクが実施した「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2023年)」によれば、中小企業のBCP策定率は、15.3%にとどまっています。


BCPを策定するメリットには、次の3つがあります。
- 緊急時における事業の早期復旧を可能にする
- 利害関係者からの信頼を得られる
- 自社の重要業務を把握するきっかけとなる
メリットを把握することで、未策定の物件オーナーは、BCP策定に前向きになれる可能性があります。ぜひ参考にしてください。
緊急時における事業の早期復旧を可能にする
BCPを策定しておくと、緊急時における事業の早期復旧が可能になります。緊急事態が発生した場合に速やかな復旧アクションを取れるようになるためです。
事業の早期復旧を実現できれば、顧客流出も防げるため、緊急事態が企業経営に与えるダメージを最小化できるでしょう。
利害関係者からの信頼を得られる
BCPを策定しておくと、株主や取引先、消費者、行政、従業員といった利害関係者からの信頼を得られる可能性があります。早期復旧が可能な体制の構築は、有事の事業継続マネジメントが適切な企業であると評価されるためです。
業種や業態を問わず、企業の使命は、収益を持続的に生み出すことです。この点、万全なBCP策定を通じて、早期復旧が可能な体制を構築している企業は、地域の雇用確保や経済の維持にも寄与し、地域における社会的責任を果たしているといえるでしょう。
自社の重要業務を把握するきっかけとなる
BCPを策定する過程で、企業は自社の重要業務を把握できます。事業継続の対策を検討することで、企業にとって重要な業務、プロセス、資材などの優先順位を把握できるためです。
結果、経営資源の投入やリソース配分の判断などを網羅した中長期的な経営戦略の立案も可能になるでしょう。

BCPは次の手順に従って策定していきます。
1. 業務継続の方針を立てる
2. BCPを実行するための組織体制を構築する
3. 被害想定をする
4. 行動計画を立てる
5. 想定した被害と計画にギャップが生じた場合の対策を考える
BCPを策定する手順は、業種・業界を問わず共通しています。ぜひ参考にしてください。
業務継続の方針を立てる
まずは、BCPの基本方針を立てます。
ここでいう方針は、BCPに記載した計画を実行するうえでの方向性や、新たな想定外の事態に対応する際にも判断基準になるものです。具体的には「自社の守るべきものは何か、非常事態でも果たすべきことは何か」「自社の存在基盤は何か、それが失われるとどうなるか」といった観点から、方針を考え、策定するとよいでしょう。
このBCPの方針を立てるうえでは、自社ならではのBCPの目的や背景(自社の理念、地理的特性、過去の災害経験)などを振り返ることが大切です。
BCPを実行するための組織体制を構築する
続いて、BCPを実行するための組織体制を構築します。
このプロセスにおいては、誰がBCP策定の責任者になるか、どの組織がどのような要員体制で参画し、誰がBCPの策定・運用の推進役を担うかを決めることが大切です。具体的に次のような項目を決めましょう。
- 業務継続組織の設置条件
- 社長不在時の対応
- 業務継続組織体制
- 業務継続組織の判断事項
- 業務継続組織の設置場所
被害想定をする
続いて、重要業務として絞り込んだ業務が、災害時にどの程度被害・影響を受けるかも想定しましょう。
たとえば、首都直下型地震である東京湾北部地震の場合に想定される被害範囲やインフラ停止などの被害想定を置き、重要業務がどのような影響を受けるか、復旧目標期間内にサービスを再開できるかといった項目を検討します。
不動産業の場合は被害想定を立てるうえで、次のような観点から整理することが大切です。
1. 対象とする不動産で、想定されるリスクに対する脆弱性を評価する
2. 想定されるリスクが実際に発生した不動産の損傷や機能の制限の程度をレベル分けして評価する
3. 対象とする不動産へのITインフラの二重化対策といった対策状況を踏まえて、復旧までの時間を想定する
行動計画を立てる
続いて、被害想定を踏まえ、企業が何を、いつから・いつまでに実施するのかを明示した行動計画を策定します。
行動計画の具体的な検討事項については後述します。
想定した被害と計画にギャップが生じた場合の対策を考える
最後に想定した被害と計画にギャップが生じた場合の対策も考えておきましょう。いわば、被害が想定を上回った場合の対策です。
この対策を立てる際は、まず目標復旧時間内に優先業務を復旧するため、必要となる経営資源を特定しましょう。特定すべき経営資源は、次のとおりです。
- 人:職員の数、業務遂行に必要なスキルなど
- モノ:物品、資機材、医薬品、備蓄食糧など
- ライフライン:電気や上下水、ガスなど
- 場所・建物:十分なスペース、建物の安全性など
- 情報システム:情報通信ネットワークや顧客データなど
- 組織・システム:組織体制、業務手順など
経営資源を特定した後は、災害時の必要な資源を補うための対策を立てましょう。立てるべき対策は、ハード対策とソフト対策の2通りです。
- ハード対策(物理的な災害対策):建物・設備の補強、備蓄品・代替品の保管、止水板設置など
- ソフト対策(訓練など無形の対策):避難訓練、業務マニュアル作成、支援を受けるための協定締結など

不動産業界において行動計画を策定する際は、次の5つの項目に留意する必要があります。
- 従業員や入居者の生命の安全が確保されるか
- 災害発生後の被害軽減策が十分に練られているか
- 指揮命令系統が明確化されているか
- 災害発生時の情報発信と情報共有の体制はどうするか
- 機密情報のバックアップ体制は十分か
行動計画を策定する際はぜひ参考にしてください。
従業員や入居者の生命の安全が確保されるか
賃貸業を営む不動産会社にとって、最も優先度が高い業務は、自社従業員や入居者の生命の安全確保です。
従業員や入居者の安全確保と安否確認として有効な事前対策・対応は、次のとおりです。
1. 不動産の耐震補強、設備・機器・什器の固定:不動産の耐震性を確認し、必要な場合は耐震補強工事を行います。また、設備・機器・什器を固定し、転倒を防ぐことが大切です。
2. 通信手段の確保、消防活動、避難誘導:防災無線などの通信手段を確保するとともに、消防計画を策定し、管理物件を含め防火管理者を選定します。また、避難経路を確認し、施設および設備、避難器具を点検、整備しておくことが大切です。
3. 救出・応急救命活動:設備会社の協力によりエレベーター救出訓練を実施します。また、応急救命対応の準備をし、救命講習などを実施します。近隣医療機関を把握し、非常時協力体制を確立しておくことも大切です。
4. 避難場所の提供、防災備品、備蓄品の確保:入居者への避難場所の提供、一般への開放可能な公共施設について検討します。非常用飲食料品の備蓄だけでなく、非常用資機材を点検・整備しておくことも大切です。
災害発生後の被害軽減策が十分に練られているか
被災後に重要業務を継続させるためには、災害発生後の被害軽減策を十分に検討しておくことが大切です。
被害軽減策の事前対策としては、耐震補強・免震化の実施といったハード面の整備だけでなく、自衛消防隊の結成・訓練や被害状況・建物危険度確認マニュアルの整備といったソフト面の対策があります。
また、災害発生後の対策としては、消防活動に加え、被災建物の電気・ガス・給排水設備の使用をいったん停止し、安全確認するなどの緊急保全活動が有効です。また、落下・飛散の危険性のあるものの防止装置や撤去といった被害拡大防止や危険箇所への侵入防止といった対策も検討しておくとよいでしょう。
指揮命令系統が明確化されているか
災害時の指揮命令系統の明確化は、最も基礎的な災害対応策です。
具体的な対策としては、災害対策本部長や事務局、各部門の対策実施部門などの組織化や、部門を越えた動員体制の構築があります。また、緊急時の対応を迅速化するために、自社の従業員または各部署に対して、「何のために」「誰の指示を受けて」「何を」「どこまで」実施するのかを災害時行動基準や就業基準、基本マニュアルを通じて明確にしておきましょう。
災害発生時の情報発信と情報共有の体制はどうするか
ブラックアウト(*)を防ぎ、企業やブランドのイメージを維持する意味では、災害が発生した際に利害関係者へ的確な情報を発信することが重要です。
具体的な事前対策については、災害発生時に活用する掲示板の準備や災害時の情報発信先の選定などがあります。災害発生後の事後対策については、対策本部内に設置する対外対応窓口・広報窓口の体制を検討しておくとよいでしょう。
(*)ブラックアウト:組織と関係者の間で双方向の情報交換ができない状態
機密情報のバックアップ体制は十分か
不動産業では、契約書類や登記済証をはじめとする重要書類を数多く扱っていることに留意が必要です。そのため、災害発生後の情報システムのデータ退避などに加え、重要書類の保管方法や滅失時の対応についても、検討しておきましょう。
このほかに検討すべき事項は、次のとおりです。
- 守るべき重要業務と情報システムの関係の明確化
- バックアップ稼働・切り替え計画、復帰計画の策定
- 自家発電装置、電源、回線など各種設備の二重化対策の実施
- 遠隔地の文書・電子データ保存サービスの活用
BCPを策定しておくことで、企業は不測の事態が発生しても従業員の安全を確保でき、適切な事業継続や早期復旧を図れます。有事発生後の適切な事業継続や早期復旧は自社のリスク耐性を対外的に証明し、取引先や市場からの評価や企業価値の向上に貢献してくれるでしょう。
こうしたBCPの効果は、資産価値の高い収益物件を抱える不動産投資業においても発揮されます。賃貸経営に損害を与える大規模災害の発生を憂慮している物件オーナーは、本記事などを参考に、BCP策定に取り組んでみてはいかがでしょうか。
参照:
一般社団法人不動産協会「不動産協会事業継続ガイドライン〜オフィスビル賃貸事業編〜(本文)」
厚生労働省医政局「【策定編】業務継続計画(BCP)策定手順と見直しのポイント」
「お客さまの利益のために努力することが、自らの利益につながる」という考え方ですので、押し売りをはじめとしたこちら都合のアプローチは一切行っていません。
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