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【税金入門2・実践編】不動産投資「節税の真実」を徹底検証 所得水準別・売却まで含めた税金シミュレーション

2025-12-16

 

不動産投資をするうえでは、所得税・住民税について正しく把握するのが大切です。不動産所得が増えれば税金の増大要因になりますし、逆に不動産投資を活用した節税もできるためです。投資による税の増大・節税効果を正しく予測しなければ、投資効果を正確に把握できません。

今回は実践編として、不動産投資が所得税・住民税にあたえるインパクトや節税効果の考え方について、シミュレーションも交えながら紹介します。

所得税・住民税の基本的な仕組みをおさらい

所得税や住民税は共に、その方の稼ぎを意味する「所得」に対して発生する税金です。ただし、所得税は「その年」の所得、住民税は「前年の所得」をもとに税額が計算されます。

所得税の税率には次のとおり「累進課税制度」があります。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

住民税は所得割・均等割の二段階の徴税ルールです。いずれも自治体によって若干ルールが違う場合がありますが、均等割は数千円程度であるのに対して、所得割は所得の10%程度の税率となります。

最後に税額計算の土台となる「所得」と「税金」は次のような式で計算します。

課税所得=収入ー経費ー所得控除
税額=課税所得×税率ー税額控除

不動産投資を活用した節税においては「経費計上や控除による所得の圧縮」が、重要となります。この点は後半のシミュレーションで詳しくみていきましょう。

不動産所得が所得税・住民税に与えるインパクトのシミュレーション

最初は「不動産所得」がプラスのときの「所得税・住民税」に与えるインパクトと、それらを加味したときの不動産投資の効果を考えてみましょう。

インパクトの大きさは、不動産所得を加味する前の所得水準によって変わります。ここでは各種所得控除を差し引いた後の給与課税所得が①5,000,000円②10,000,000円③20,000,000円の3つのケースを見ていきましょう。以降、住民税所得割の税率は10%とします。

給与課税所得 5,000,000 10,000,000 20,000,000
所得税率 20% 33% 40%
控除 427,500 1,536,000 2,796,000
①所得税額 572,500 1,764,000 5,204,000
②住民税所得割 500,000 1,000,000 2,000,000
①+②の合計 1,072,500 2,764,000 7,204,000
*簡単化のため、所得税と住民税所得割の課税所得は同額であったとする

ここで、次の新築木造アパートの不動産投資を始めたとします。簡単化のため、記載の内容以外の要素(たとえば購入時諸費用など)はないものとします。ローンは元利均等返済で、金利水準は変化しなかったものと仮定します。

建物価格 20,000,000
土地価格 30,000,000
実質利回り* 6.0%
ローン借入額 30,000,000
借入期間 35年
金利 2.0%
*実質利回りは固定資産税など所得税・住民税以外の租税公課を差し引いた後の収入を想定したもので、物件総額(5,000万円)に対する利回り。

所得税・住民税負担を考慮する前のキャッシュフローは以下のとおりとなります。

①年間ネット収入 3,000,000
②ローン返済額 1,192,536
③キャッシュフロー(①ー②) 1,807,464

所得税・住民税のインパクトを考えるうえでは、不動産所得を見積もる必要があります。経費となる金利支払い額は毎月変わっていくため、ここでは当初1年の合計値としたとき、所得金額は次のとおりです。

①年間ネット収入 3,000,000
②減価償却費 920,000
③ローン金利返済額 594,533
④不動産所得試算額 1,485,467

不動産所得を考慮した際の所得税・住民税所得割の金額は次のとおりです。

①給与課税所得 5,000,000 10,000,000 20,000,000
②不動産所得試算額 1,485,467 1,485,467 1,485,467
総所得(①+②) 6,485,467 11,485,467 21,485,467
所得税率 20% 33% 40%
控除 427,500 1,536,000 2,796,000
③所得税額 869,593 2,254,204 5,798,187
④住民税所得割 648,547 1,148,547 2,148,547
③+④の合計 1,518,140 3,402,751 7,946,734

不動産所得により増大した税金額は、不動産投資の実質的なコストとして捉える必要があります。投資効果を年間キャッシュフローと増税インパクトの差と捉えると、それぞれのケースの投資効果は次のとおりです。

給与課税所得 5,000,000 10,000,000 20,000,000
①給与所得のみの税額 1,072,500 2,764,000 7,204,000
②総所得に対する税額 1,518,140 3,402,751 7,946,734
③現金収入増額 1,807,464 1,807,464 1,807,464
④所得税・住民税増税インパクト(②ー①) 445,640 638,751 742,734
⑤投資効果(③ー④) 1,361,824 1,168,713 1,064,731

このように不動産所得が黒字のケースでは、所得水準が高い方ほどキャッシュフローと増税インパクトの差が小さくなり、1年あたりの不動産投資の効果が減少します。所得税率が高い方は、増税額を考慮しても充分な効果が見込まれるかを慎重に確認しましょう。

不動産投資を活用した節税効果のシミュレーション

不動産投資はしばしば節税対策の手法としても活用されますが、節税効果も所得水準によって変動する点に注意が必要です。

減価償却期間は所得が高い方ほど税額圧縮の効果は大きい

ここからは給与課税所得が①3,000,000円②10,000,000円③20,000,000円の3つのケースを考えていきましょう。まず給与所得のみを考えたときの税額は次のとおりです。

給与課税所得 3,000,000 10,000,000 20,000,000
所得税率 10% 33% 40%
控除 97,500 1,536,000 2,796,000
①所得税額 202,500 1,764,000 5,204,000
②住民税所得割 300,000 1,000,000 2,000,000
①+②の合計 502,500 2,764,000 7,204,000

今回は節税目的の投資を想定して、築30年の木造アパートで投資した想定をしましょう。それ以外の物件やローン特性はさきほどと同様とします。

建物価格 20,000,000
土地価格 30,000,000
実質利回り 6.0%
ローン借入額 30,000,000
借入期間 35年
金利 2.0%

この条件の場合、減価償却は木造としては最短の4年で終了します。最初の1年の不動産所得は次のとおりです。なお、不動産所得が赤字のときにはローン金利支払額は経費計上できません。また、減価償却は定額法で行うものとします。

年間ネット収入 3,000,000
減価償却費 5,000,000
不動産所得試算額 -2,000,000

この前提では不動産所得が赤字の状態となります。給与所得など多くの所得は、不動産所得と損益通算が可能なので、この赤字は総所得の圧縮に寄与します。

給与課税所得 3,000,000 10,000,000 20,000,000
不動産所得試算額 -2,000,000 -2,000,000 -2,000,000
総所得 1,000,000 8,000,000 18,000,000
所得税率 5% 23% 40%
控除 0 636,000 2,796,000
①所得税額 50,000 1,204,000 4,404,000
②住民税所得割 100,000 800,000 1,800,000
①+②の合計 150,000 2,004,000 6,204,000

以上をもとにすると「節税効果も加味した投資1年目の投資効果」は次のとおりとなります。なお、ここではキャッシュフローと節税額の合計を投資効果と捉えます。

給与課税所得 3,000,000 10,000,000 20,000,000
①給与所得のみの税額 502,500 2,764,000 7,204,000
②総所得に対する税額 150,000 2,004,000 6,204,000
③現金収入増額 1,807,464 1,807,464 1,807,464
④所得税・住民税節税額*(②-①) -352,500 -760,000 -1,000,000
⑤投資効果(③ー④) 2,159,964 2,567,464 2,807,464
*マイナスが大きいほど税金の圧縮効果が大きいことを意味する

減価償却額は売却時に譲渡所得税を増やす要因に

減価償却費の計上は、売却時に譲渡所得税を増やす要因となる点に注意が必要です。不動産を売却したときに利益が出ると、譲渡所得が発生します。簡単に表すと次のように計算します。

譲渡所得=売却金額 -(取得費 - 計上済の総減価償却費)- 譲渡にかかるコスト

譲渡所得税は、短期譲渡所得なら合計39.63%、長期譲渡所得なら合計20.315%です。不動産を売却した年の1月1日時点で5年を超えていれば長期譲渡となり、それ以下は短期譲渡となります。

毎年節税に寄与した減価償却費は、物件を売却するときの譲渡所得税の増加要因となります。不動産投資全体の節税効果は、売却時の譲渡所得に与える影響まで考慮しなければなりません。

所得税率が低い方は譲渡所得税を含めると節税にならないケースも

節税効果を正確に見積もるために、譲渡所得税の影響まで考えておきましょう。給与に対する所得税が①3,000,000円②10,000,000円③20,000,000円の3つのケースで、譲渡所得税の影響まで加味した節税効果を計算してみます。

先ほどと同様の条件である築30年の木造アパートを10年間保有したのち売却するものとします。

建物価格 20,000,000
土地価格 30,000,000

ここでは売却金額を45,000,000円、売却時のコスト5,000,000円とします。譲渡所得は以下の表の通り10,000,000円です。このケースでは長期譲渡所得税が適用されるため、税率20.315%で2,031,500円の税金がかかります。

売却金額 45,000,000
取得費 50,000,000
総減価償却費 20,000,000
売却コスト 5,000,000
譲渡所得 10,000,000
長期譲渡所得税 2,031,500

さきほどは1年あたりの節税額を計算しましたが、この物件の減価償却期間は4年なので、譲渡所得税の増加まで考慮した投資期間全体での節税効果は次のとおりです。

給与課税所得 3,000,000 10,000,000 20,000,000
1年間の節税効果 352,500 760,000 1,000,000
①4年合計の節税効果 1,410,000 3,040,000 4,000,000
②売却時の譲渡所得税増加額 2,031,500 2,031,500 2,031,500
③総節税効果*(①ー②) -621,500 1,008,500 1,968,500
*ここでは減価償却費計上による節税効果と譲渡所得税増加の影響の差額を総節税効果と叶える

基本的に高所得なほど節税効果は大きくなります。またここで注意が必要なのは、給与所得のみで所得税率+住民税率が20.315%を下回る方は、譲渡所得税の増加インパクトの方が大きくなるため、節税にならない可能性があるという点です。節税目的での投資は、譲渡所得税の影響まで加味してインパクトを試算する必要があります。

所得税・住民税への正確な理解が不動産投資の成功のカギに

不動産投資は、所得税・住民税への影響をしっかりと見積もらなければ、正確な効果を試算することはできません。不動産所得が黒字なら税金が増えてしまいますし、赤字なら節税額が投資効果の一部と捉えられます。

税金のポジションをシミュレーションで予測しながら、投資判断を行いましょう。節税目的で投資するときには、譲渡所得税の影響も正しく見積もる必要があります。譲渡所得税の影響を無視して、節税効果を過大評価しないように、注意が必要です。
 
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