不動産投資家が法人化するタイミング|売上800万円超から準備を | 全国の不動産投資・収益物件|株式会社リタ不動産
不動産投資家が法人化するタイミング|売上800万円超から準備を
2025-06-17

不動産投資における「法人化」とは、不動産投資家自身が代表となって資産管理会社を設立し、個人ではなく法人として不動産投資を続けていくことを指します。ただし、不動産投資の収益が少ない状態で法人化するのは、税金の負担や設立にかかる費用・手間の面からもあまり好ましくありません。この記事では、不動産投資家が法人化すべきタイミングや具体的な手続きについて詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
不動産投資家が法人化すべきタイミングですが、法人化することによるメリットがデメリットを上回る時期を見極めるのが重要です。いつがその時期になるかについてはさまざまな考え方がありますが、ここでは「所得税と法人税の税率」の観点から考えてみましょう。
「所得税の税率>法人税の税率」が目安
結論からいうと、課税所得が増え、個人の所得税の税率が法人税の税率を上回るタイミングで法人化を検討すべきと言えます。
前提として、個人事業主として不動産投資をし、利益=所得が得られた場合、所得税を支払わなくてはいけません。そして、所得税は累進課税税率といって、所得が増える仕組みになっています。
課税される所得金額(千円未満切捨て) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
一方、法人税の税率は所得額800万円を基準としてほぼ一定になっています。なお、株式会社や合同会社などの普通法人の場合、税率は23.4%です。
このことから、所得額(利益の額)が800万円よりも大幅に超える場合は、法人化により節税できる可能性が出てきます。ただし、法人を設立し、役員報酬を分配する形にする場合、会社としての法人税・社会保険料を払う傍ら、自身が受け取る役員報酬に対する所得税・社会保険料を支払わなくてはいけません。役員報酬の設定金額次第では、高額な社会保険料が発生するためかえって手取りが減る可能性もあります。
法人化によりどれだけの節税効果が見込めるかは個々の状況によって異なるため、税理士等の専門家に相談し、入念にシミュレーションしましょう。
一口に法人化といっても、どのような会社を設立するかによって具体的な手順は異なります。ここでは、株式会社を設立する場合の手順およびかかる費用について解説するので、参考にしてください。
株式会社を設立する際の手順
- 会社の基礎情報を決める
- 会社の実印を作る
- 会社の実印を作る
- 定款を作る
- 公証役場で定款の認証を受ける
- 資本金を払い込む
- 法務局で登記申請をする
①会社の基礎情報を決める
最初に、会社の基礎情報を決めなくてはいけません。また、詳しくは後述しますが、これらの情報を含めた一定の事項を盛り込んだ定款を作り、公証役場で認証してもらう必要があります。
具体的には、次の内容をまず決めましょう。
会社形態 | ここでは「株式会社」。なお、現在の法律では株式会社・合同会社・合名会社・合資会社は設立できるが、有限会社は設立できない。 |
---|---|
商号(会社名) | 社名の前後いずれかに会社の種類を入れるなど一定のルールがある。 |
事業目的 | 基本的には「不動産の賃貸・管理」と書くが、将来的にやりたい事業があれば盛り込んでも良い。ただし、あまりに多いとかえって信頼性を損なうため7~8個程度に抑えるのが無難。 |
本店所在地 | 会社の本拠地となる住所。自宅を指定しても良いが、プライバシーが心配ならバーチャルオフィスの利用も要検討。 |
資本金 | 会社設立・増資に当たり出資者が拠出した資金。法律上は1円でも問題ないが、現実的には初期費用と運転資金3ヶ月分程度の合計額を用意するのが望ましい。 |
会社設立日 | 法務局に会社設立の登記申請をする日が該当。 |
会計年度 | 法人であれば基本的に自由に設定可能。本業の繁忙期を避けると良い。 |
役員や株主の構成 | 最低1名以上の取締役と1名以上の監査役が必要。これらの役員の人数や株主の構成を決める。 |
②会社の実印を作る
会社の基礎情報を決めつつ、会社の実印作りも進めていきましょう。実際に法人として事業を行う際は、何かと押印を求められることが多いのも事実です。そのため、登記を済ます前に会社の実印を完成させておくとスムーズに進められます。

なお、代表者印を作る際は「1辺の長さが1cm以上かつ、3cmの正方形に収まるもの」という条件を満たさなくてはいけません。実際は業者に発注する際に「代表者印として使いたい」という旨を伝えれば特に問題ないでしょう。
価格は個々の業者や使う素材によっても異なりますが、5,000円~5万円程度です。1週間程度の納期が発生することが多いため、なるべく早めに注文するのをおすすめします。
③定款を作る
定款とは、会社に関する基本的な事項を定めた、いわば「会社におけるルールをまとめたもの」です。会社を設立する際は必ず作成することになります。
なお、定款に盛り込む事項は、その内容や性質によって次の3つに分類することが可能です。
絶対的記載事項 | 必ず定款に盛り込まなくてはいけない事項のこと。万が一抜け・漏れがあった場合、定款自体が無効になる。具体例として、「社名(商号)」「本店所在地」「事業の目的」「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」「発起人の氏名(名称)と住所」が挙げられる。 |
---|---|
相対的記載事項 | 法的な記載義務はないが、定款に盛り込むことにより効力を発揮する事項のこと。具体例として株式・取締役会に関する事項が挙げられる。 |
任意的記載事項 | 法的な記載義務はなく、定款に盛り込まなかったとしても定款以外の文書で取り決めることで効力が発生する事項のこと。具体例として、役員報酬や配当金に関する事項が挙げられる。 |
作成した定款は、紙もしくは電子ファイル(電子定款)にまとめ、法務局や公証役場に提出しなくてはいけません。
④公証役場で定款の認証を受ける
定款が完成したら、公証役場で認証を受けなくてはいけません。紙の定款を使う場合は、本店所在地の公証役場に出向く必要があります。事前に予約して訪問する日時を決めなくてはいけないため、一度問い合わせておきましょう。

また、公証役場に出向く際は以下のものを持参しなくてはいけません。
- 定款:3部
- 発起人全員の3ヶ月以内に発行された印鑑登録証明書:各1通
- 発起人全員の実印
- 認証手数料:1万5,000〜5万円(※)
- 謄本代:250円×定款の枚数(現金で持参)
- 収入印紙:4万円(電子定款は不要)
- 委任状(代理人が申請する場合)
- 実質的支配者となるべき者の申告書
※資本金額や条件により上下するため要事前確認
なお、訪問に先立って定款をFAXや郵送で送っておくと、当日手続きをスムーズに進められます。
また、電子定款の場合は法務省の「登記・供託オンライン申請システム」からオンラインで手続きできるため、公証役場に出向く必要はありません。
⑤資本金を払い込む
定款の認証が完了したら、発起人の個人口座に資本金を払い込みます。手続きが終わったら、資本金の払い込みをした証拠として、通帳の表紙の裏表(銀行名・支店名・銀行印が判別できる箇所)と振込内容が記載されたページをコピーしてください。ネット銀行など通帳がない場合は利用明細をプリントアウトして保管し、後述する登記申請時にすぐに提出できるようにしておきましょう。
⑥法務局で登記申請をする
ここまでできたら、以下の書類を法務局に提出してください。
- 登記申請書
- 登録免許税分の収入印紙を貼り付けた納付用台紙(※)
- 定款
- 発起人の決定書
- 設立時取締役の就任承諾書
- 設立時代表取締役および設立時監査役の就任承諾書
- 設立時取締役の印鑑登録証明書
- 資本金の払込があったことを証する書面
- 印鑑届出書
- 「登記すべき事項」を記載した書面または保存したCD-R
※15万円もしくは資本金額×0.7%のどちらか高いほうの金額を使う
提出後、法務局により確認が行われ、問題がなければ10日ほどで手続きが完了します。完了の連絡はありませんが、何らかの不備があった場合は連絡があるため注意が必要です。
かかる費用は?
株式会社を設立する際の費用は以下の通りです。
費用の項目 | 金額 | 概要 |
---|---|---|
収入印紙代 | 4万円 | 公証人役場に定款に貼付する形で支払う。 |
定款認証の手数料 | 5万円 | 公証人役場で支払う。 |
株式払込事務取扱手数料 | 払込資本金×約0.25% | 銀行などの金融機関に支払う。 |
登録免許税 | 払込資本金×約0.7% | 登記所で支払う。 |
印鑑の作成代金 | 5,000〜5万円 | 購入先の業者に支払う。使う素材によっても値段は上下するので確認。 |
司法書士などへの委託料 | 6~10万円程度 | 金額は一般的な相場。依頼先によってはこれよりも高いことがあるため要事前確認。 |
合同会社を設立する形で不動産投資を法人化する際の基本的な流れは以下の通りです。
- 会社の基礎情報を決める
- 会社の実印を作る
- 定款を作る
- 出資金を払い込む
- 登記に必要な書類をまとめる
- 法務局で登記申請をする
大まかな流れは株式会社の際と変わりありませんが、細かい部分が多少異なるので解説します。
①会社の基礎情報を決める
株式会社を設立する際と同様、まずは会社の基本情報を決めましょう。合同会社を設立する場合、商号(会社名)は「合同会社〇〇」もしくは「■■合同会社」となります。
②会社の実印を作る
株式会社の場合と同様、合同会社でも会社の実印を作っておくと便利です。なお、後述する登記申請時に法務局に印鑑届出書を提出しなくてはいけません。法務局のWebサイトに掲載されている記載例を見て作成し、当日問題なく持参できるようにしましょう。
③定款を作る
実印が出来上がってくるまでの間に定款を作りましょう。基本的には、会社の基本情報として決めた事項を盛り込みます。なお、株式会社の定款とは異なり、合同会社の定款は法務局での認証を受ける必要はありません。
④出資金(資本金)を払い込む
株式会社の場合と同様、資本金を払い込みましょう。完了したら、通帳の表紙など銀行名・支店名・銀行印が判別できる箇所と振込内容が記載されたページのコピーを保管してください。通帳がない場合は利用明細のプリントアウトを代用すれば問題ありません。
⑤登記に必要な書類をまとめる
ここまで出来たら、以下の書類をまとめて法務局に提出できるよう準備しましょう。
- 定款
- 印鑑届出書
- 代表社員の印鑑登録証明書
- 払込証明書
- 代表社員、本店所在地及び資本金決定書(定款に記載されていれば不要)
- 代表社員就任承諾書
- 登記用紙と同一の用紙(CD-Rも可)
- 登録免許税納付用台紙
- 合同会社設立登記申請書
なお、書類は以下の順番でまとめるのが望ましいです。
- 登記申請書(収入印紙貼り付け台紙を合わせた状態)
- 定款
- 代表社員、本店所在地及び資本金決定書
- 代表社員の就任承諾書
- 代表社員の印鑑登録証明書
- 払込証明書(通帳のコピーを合わせた状態)
⑥法務局で登記申請をする
まとめた登記申請書類と印鑑届出書を法務局に提出すれば、手続きが終わります。特段不備がなければ通常1週間ほどで完了です。

なお、法務局に登記の申請をした日が会社設立日として扱われるため「自分の誕生日」など指定したい日があるなら、その日に書類を出す必要があります。また、法務局が開庁しているのは平日のみであるため、土日祝日を会社設立日として指定することはできません。
かかる費用は?
合同会社設立にかかる費用は以下の通りです。
項目 | 金額 |
---|---|
法定費用(定款に貼付する収入印紙代) | 4万円(電子定款の場合は不要) |
登録免許税 | 6万円もしくは、資本金の0.7%(いずれか高額な方) |
印鑑の作成費用(銀行印や社判など) | 5,000円~5万円 |
登記簿謄本 | 480~600円 |
印鑑証明 | 390~450円 |
司法書士への報酬 | 5~9万円(依頼先により異なる) |
だいたい10~20万円といったところですが、資本金の額や依頼する司法書士によっても金額は上下するため、事前に確認しましょう。
合同会社、株式会社を設立した後は、税金関係・労務関係の手続きも忘れずに済ませてください。具体的にどのような手続きをする必要があるか、簡単に解説します。
税金関係の手続き
まず、税金関連の手続きですが、会社の本店所在地がある地域を管轄する税務署および地方自治体(都道府県・市区町村)で行う必要があります。会社の本店所在地がある税務署には、以下4点の書類を提出してください。
- 法人設立届出書
- 青色申告の承認申請書
- 与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
また、地方自治体(都道府県・市区町村)には以下3点の書類を提出し、地方税の手続きを行う必要があります。
- 法人設立届出書
- 定款のコピー
- 登記事項証明書
提出する書類や提出先となる地域によっても期限は異なるため、事前に確認しておきましょう。
労務関係の手続き
合同会社・株式会社を含めた法人には、社会保険に加入する義務があります。以下3つの書類を登記から5日以内に年金事務所に提出してください。
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
- 健康保険被扶養者(異動)届
また、従業員を雇う場合は労災保険・雇用保険の加入手続きも必要です。ただし、会社員の副業として不動産投資を法人化する場合は従業員を雇わないことがほとんどであると考えられるため、本記事では割愛します。
不動産投資のために当初は、合同会社として設立した会社であっても、その後株式会社に組織変更すること自体は可能です。
事実、資金調達のしやすさや社会的な信頼性の高さという点では、合同会社よりも株式会社のほうが有利な側面があります。そのため、事業拡大や銀行融資、出資を受ける必要が生じたタイミングで組織変更する人も一定数います。
ただし、その際は以下の手続きをしなくてはいけません。
組織変更にあたっての手続き
- 組織変更計画書を作成する
- 完成した組織変更計画書に対し、社員全員の同意を得る
- 組織変更の公告をする
- 株式会社の設立登記および組織変更の登記申請を済ませる
- 税務署、市区町村、年金事務所等に組織変更を済ませた旨の届出書を出す
- 債権者保護の手続きを進める
なお、組織変更にあたっては、官報への広告掲載費や合同会社解散・株式会社設立に関する登録免許税がかかります。
具体的な金額は個々のケースにより異なりますが、だいたい10万円程度を見込んでおきましょう。
不動産投資の法人化のタイミングは人それぞれですが、一つの目安として売上800万円を超えたら司法書士・税理士などの専門家に相談を始めてください。株式会社の設立には相応の費用がかかるため、最初は費用が比較的安い合同会社を作り、その後株式会社に変更するのも一つの方法です。
ただし、法人化にはさまざまなメリットがある一方、デメリットもあるため、その点も考えながら慎重に検討を進めましょう。

「お客さまの利益のために努力することが、自らの利益につながる」という考え方ですので、押し売りをはじめとしたこちら都合のアプローチは一切行っていません。
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