料金の上乗せが禁止されるLPガス法改正とは?賃貸オーナーへの影響も解説! | 全国の不動産投資・収益物件|株式会社リタ不動産
料金の上乗せが禁止されるLPガス法改正とは? 賃貸オーナーへの影響も解説!
2025-03-06

経済産業省は2024年4月2日、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則」の一部を改正する省令を公布しました。
施行規則の改正により、これまで不透明だったLPガス料金の体系が明確化され、多くの賃貸オーナーは家賃や設備費用などの見直しが必要になると考えられています。
そうしたなか、公布された3つの改正省令のうち、2つは2024年中に施行。2025年4月2日からは新たに「三部料金制の徹底」が施行されます。
三部料金制の徹底は、賃貸オーナーにとって重要な影響をおよぼす制度改正だといわれています。
それを踏まえ、本記事では、改正内容の詳細について解説します。施行規則が改正される背景や、制度改正が賃貸オーナーにおよぼす影響についても解説するため、ぜひ参考にしてください。
目次
まず、今回改正されたLPガス法施行規則の上位法にあたるLPガス法について解説します。
そもそもLPガスとは
LPガス(Liquefied Petroluem Gas)は炭素と水素で構成される化合物である液化天然ガスの略称で、一般的に頭文字をとってLPガスと呼ばれています。

LPガスにはブタンとプロパンと2種類がありますが、一般家庭用で使われているのはプロパンです。そのため、LPガスはプロパンガスとも呼ばれています。
他方、LPガス事業は石油会社や商社の事業部などの元売、LPガスをボンベに入れる充填所を持つ事業者である卸売、一般消費者にガスを供給する小売の3つの事業者で構成。このうち、不動産事業との関わりが深い小売事業者の多くは、業界内でも競争が働かず、都市ガスよりも料金が高いことが問題視されています。
LPガス法とは
LPガス法とは、通称「液化天然ガス法」で、正式名称を「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」といいます。
LPガス法は、液化石油ガスによる災害の防止や液化石油ガスの取引を適正にすることが目的。そのため、同法では、災害の発生を防止するために取り組むべき事項や、ガス料金の公表義務などが定められています。
LPガス法の下位に位置する法令として、販売事業の登録申請方法や適正な保安業務などについて明記した同法の施行規則があります。

2024年4月2日に公布されたLPガス法施行規則の改正内容は、次の3つです。
- 過大な営業行為の制限
- 三部料金制の徹底(設備費用の外出し表示・計上禁止)
- LPガス料金等の情報提供
このうち、過大な営業行為の制限とLPガス料金等の情報提供は2024年7月2日に施行されました。三部料金制の徹底は、2025年4月2日に施行される予定です。
ここからは、各改正内容について解説します。
過大な営業行為の制限
過大な営業行為の制限では、LPガス事業者が、不動産や建設の関係者に対し、設備貸与や紹介料などの形で過大な利益を供与するといった営業行為を制限するため、次のような措置が講じられました。
- 正常な商慣習を超えた利益供与の禁止(施行規則第16条第15の3、4)
- 消費者の事業者選択を阻害するおそれのある、LPガス事業者の切り替えを制限するような条件付き締結などの禁止(施行規則第16条第15の5号、6号)
三部料金制の徹底(設備費用の外出し表示・計上禁止)
三部料金制の徹底では、不透明となっている料金表示を是正するため、基本料金と従量料金、設備料金から構成される三部料金制が徹底されます。具体的には、LPガスとは関係ない費用がLPガス料金として上乗せ回収されている現状を是正するため、次のような措置が講じられます。
- 基本料金、従量料金、設備料金からなる三部料金制(設備費用の外出し表示)の徹底(施行規則第16条第15号の7)
- 電気エアコンやWi-Fiなど、LPガス消費と関係のない設備費用のLPガス料金への計上禁止(施行規則第16条第15号の8)
- 賃貸向けLPガス料金においては、ガス器具などの消費設備費用についても計上禁止(LPガス料金の算定の基礎となる項目を基本料金、従量料金、設備料金とした上で、設備料金は「該当なし」と記載)(改正省令第16条第15号の9)
資源エネルギー庁は、上記①について新規契約・既存契約の両方に適用される一方で、上記②と③については新規契約(既存契約は早期移行努力義務)のみ適用されるとしています。
なお、2025年2月7日現在で、上記改正内容にかかる施行規則の文言はなく、施行後に追記されるとみられます。
LPガス料金等の情報提供
改正前まで、賃貸集合住宅の入居者は、入居後にLPガス事業者を任意で変更することはできませんでした。それを踏まえ、入居前にLPガス料金などの情報を入手できるよう、次のような措置が講じられました。
- 入居希望者へのLPガス料金の事前提示の努力義務(入居希望者に直接またはオーナー、不動産管理会社、不動者仲介会社などを通じて提示)(施行規則第16条第15号の2)
- 入居希望者からLPガス事業者に対して直接情報提供の要請があった場合は、それに応じることを義務付け(同上)

LPガス法施行規則が改正される背景には、次の2つがあります。
- 無償貸与による料金の上乗せ
- 貸付配管の問題に伴う不透明な費用の支出
いずれも不動産経営に無関係ではない事象ですので、ご留意ください。
無償貸与による料金の上乗せ

無償貸与による料金の上乗せとは、LPガス事業者が賃貸オーナーにガス器具やエアコンなどの設備を無料で提供する一方で、無償貸与にかかる費用が不透明な形で入居者のガス料金に価格転嫁される商慣習です。
無償貸与サービスによってガス料金にガスと関係のない設備費が上乗せされている事実を入居者に説明する義務は、LPガス事業者にありません。結果、入居者が、十分な説明を受けずに割高なガス契約を結ぶという悪質なケースが多発していたのです。
こうした商慣習は、すべてがLPガス事業者による働きかけで形成されているわけではありません。近年では、集合住宅オーナーや建設業者が、LPガス供給契約の締結を条件に、LPガス事業者に対して無償貸与を要求するという事例もあわれています(下図)。

貸付配管の問題
貸付配管とは、一戸建てを建てる際に、建設業者が提携しているLPガス事業者に屋内配管工事をさせる商慣行です。この商慣習が採用されると、一戸建ての建設後、LPガス事業者はガス配管の所有権を持ったままLPガスを供給できます。
LPガス事業者がガス配管の所有権を持ったままLPガスを供給すると、建設業者はガス配管の費用分、建物を安く販売することが可能です。

一見、貸付配管はデメリットの少ない商慣習に見えます。しかし、LPガス事業者が負担するコストは無償ではありません。
多くの場合、LPガス事業者が負担する配管の賃借コストはガス料金に転嫁されます。つまり、貸付配管でも、無償貸与のときの同様にガス料金の上乗せが起きているのです。
貸付配管によって発生する問題は、ガス料金の上乗せだけではありません。建物の入居者がLPガスの契約を解約した時に、貸付配管の精算費用をLPガス事業者から突然請求され、訴訟に発展するといった事例も相次いでいます。
罰則などの対象となる規律と適用される罰則
施行規則の改正により、罰則などの対象となる規律は次の3つです。
- 過大な営業行為の制限
- 三部料金制の徹底(設備費用の外出し表示・計上禁止)
- 入居予定者から直接要請があった場合におけるLPガス料金情報の提供
これらの規律に反した行為をガス事業者がした場合、次のような罰則が適用されます。
資源エネルギー庁は罰則の実効性確保に向け、通報フォームの設置・活用や関係省庁との連携などを通じた市場監視の強化・徹底に取り組むとしています。
施行規則の改正により、LPガス消費と関係のない設備費用のLPガス料金への計上が禁止されるため、新規契約者に関しては余分な料金の発生がなくなり、ガス料金が安くなります。
また、LPガス事業者や賃貸集合住宅のオーナーなどは基本料金と従量料金、設備料金などの算定根拠を新規契約者、既存契約者に明示しなければなりません。そのため、入居者は入居後に、「家賃が安い意味がなかった」と感じることなく、納得してガスを利用できるようになります。

施行規則の改正により、賃貸集合住宅を中心とした賃貸オーナーには、次のような影響がもたらされます。
- 家賃改定の検討
- 設備費用の再検討
- 空室率上昇の恐れ
- 中途解約による違約金発生のリスク
特に家賃改正と設備費用の検討は現実に起こる可能性が高い影響ですので、ぜひご留意ください。
家賃改定の検討
設備の無償貸与を受けて家賃や駐車場代を安くしていた賃貸オーナーは、家賃改定を検討しなければなりません。施行規則の改正により、LPガス消費と関係ない設備費用のLPガス料金への計上(上乗せ)が禁止されるためです。
具体的に検討される家賃改正については不透明な価格転嫁がなくなることを踏まえ、多くの場合、値上げの方向に進むと考えられます。
設備費用の再検討
賃貸オーナーは設備費やメンテナンスを含めた修繕費の再検討が求められます。施行規則の改正で無償貸与サービスが衰退し、設備費や修繕費をLPガス事業者に提供してもらえなくなるためです。
設備費や修繕費の再検討の結果、賃貸オーナーは家賃を値上げするか、設備費や修繕費を自前で負担する必要が生じると考えられます。
空室率上昇の恐れ
賃貸オーナーは、空室率上昇も覚悟しなければなりません。LPガス料金の事前提示により、アンバランスなLPガスの料金に疑念を抱く入居希望者に契約を断られるリスクがあるためです。
中途解約による違約金発生のリスク
施行規則の改正を受けて、契約するLPガス事業者の変更を希望する賃貸オーナーは、契約の中途解約によって違約金が発生するリスクがあります。
本来、LPガス事業者の変更自体に違約金は発生しません。しかし、LPガス事業者と最低契約年数の定めがある契約を結び、契約期間内にLPガス事業者を変更するときは、1〜15万円の違約金を請求される可能性が高いとされます。
施行規則の改正に適応するため、賃貸オーナーはまず既存の賃貸契約におけるLPガス料金の内訳を確認し、三部料金制に準拠する形で適切な変更を実施しましょう。たとえば、ガス料金に設備費や修繕費が含まれている場合、既存の転嫁分を家賃に移行するか、ご自身で負担するかを選ぶことが重要です。
また入居希望者へのLPガス料金の事前提示が努力義務になるため、契約しているLPガス事業者と協議を重ね、ガス料金表やその他必要な情報を入手しましょう。
ガス料金にかかる情報を入手した後は、不動産管理会社や不動産仲介会社と連携し、入居希望者に対して迅速にLPガス料金情報を提供できる体制を整えましょう。
LPガス料金の上乗せ禁止をはじめ、今回のLPガス法の改正は、不透明だったLPガスの商慣行を是正するのが目的です。
しかし、収益物件を所有する賃貸オーナーへ与える影響が大きい制度改正だといわれてます。多くの賃貸オーナーはLPガス法の改正を受けて、家賃や設備費の面で再検討が求められるでしょう。

「お客さまの利益のために努力することが、自らの利益につながる」という考え方ですので、押し売りをはじめとしたこちら都合のアプローチは一切行っていません。
「お客さまの利益のために努力することが、自らの利益につながる」という考え方ですので、押し売りをはじめとしたこちら都合のアプローチは一切行っていません。

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