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2025年改正建築基準法の重要ポイント5選を徹底解説! 不動産投資業界に与える影響も紹介!
2025-02-07

2025年4月に改正建築基準法が施行されます。改正法の施行により、一般的な2階建ての木造住宅の多くが該当する「4号建築物」が、建築確認申請で構造の審査などが必要な「新2号建築物」になります。
新2号建築物の適用に伴って建築物の設計・施工プロセスで時間やコストの増加が予想され、改正法の施行は不動産投資業界に大きな影響を与えるとされています。
そこで、本記事では、2025年改正建築基準法で重要な5つのポイントについて解説します。同時に施行される改正建築物省エネ法の要点や影響についても説明するので、ぜひ参考にしてください。
目次
建築基準法とは、建築物の敷地や構造、設備、用途に関する最低基準を定めた法律です。各種最低基準の設定により、国民の生命や健康、財産の保護を図ることを目的としています。
建築基準法の規定は、「制度規定」と「実体規定」に分類が可能です。前者の制度規定とは、建築基準法内に出てくる用語の定義や建物を建てる際の手続き、罰則などの規定を指します。

制度規定に対し、実体規定とは、建築物の敷地や構造、設備、用途など建築物に直接関係する規定です。実体規定は、さらに日本全国どこでも適用される単体規定と、原則として都市計画区域・準都市計画区域でだけ適用される集団規定に大別されます。
実体規定のうち、単体規定は建築基準法第2章に定められた規定で、一つひとつの建築物に着目し、主として建築物の安全や防火、衛生の観点から技術的基準が設定。一方、集団規定は、建築基準法第3章に定められた規定で、敷地と道路の関係や建築物の用途、用途地域ごとの建ぺい率や容積率などの最低基準が定められています。
2025年の建築基準法改正では、特定の規定に限定されず、全面的な制度改正が施されます。施行日以降に確認検査機関あるいは特定行政庁に建築確認申請する建築物の設計内容については、新たな基準に適合させなければなりません。ただし、施行日より前に建築確認申請している場合、設計内容の変更は不要です。

2025年改正建築基準法の重要ポイントには、次の5つがあります。
- 4号特例の縮小
- 構造計算が必要な木造建築物の規模変更
- 大規模木造建築物における防火規定変更
- 中層建築物に適用される耐火性能基準の緩和
- 既存不適格建築物に対する現行基準の一部免除
いずれも重要な改正ポイントですが、特に「4号特定の縮小」が重要とされます。ぜひご参考にしてください。
4号特例の縮小
現行法では、都市計画区域の区域内で以下の基準を満たす建築物については、建築確認検査で構造規定などの一部審査が簡略化される特例制度「4号特例」が設けられています(第6条の4)。
- 木造:「2階建て以下」かつ「延べ床面積500㎡以下」かつ「高さ13mもしくは軒高9m以下」
- 非木造:「平屋」かつ「延べ床面積200㎡以下」
しかし、4号特例により、小規模住宅の新築やリフォームの手続きがスムーズに進められる反面、耐震性や安全性が十分に確認されないまま建築されるケースが散見されていました。
そこで、今回の改正で、「4号特例」は同法の条文から削除され、従来の「2号建築物」「3号建築物」は、「新2号建築物」と「新3号建築物」に振り分けられます。新2号建築物と新3号建築物の条件は、次のとおりです。
- 新2号建築物:木造2階建て、または延べ面積が200㎡を超える木造平屋建て
- 新3号建築物:延べ面積200㎡以下の木造平屋建て
新2号建築物は、すべての地域で建築確認検査が必要なほか、構造の安全性と省エネ基準の審査を受けなければなりません。
新2号建築物に対し、3号建築物は都市計画区域内に建築する際には、建築確認・検査が必要となるケースがありますが、従来の4号特例と同様に建築確認検査が簡略化されます。

構造計算が必要な木造建築物の規模変更
2025年改正建築基準法では、建築物の断熱性向上のために、階高を高くした建築物のニーズが近年高まっていることを踏まえ、簡易的な構造計算(許容効力度計算)ができる建物の高さが高く変更されます。
簡易的な構造計算(許容効力度計算)の規模 | |
---|---|
現行法 | 高さ13m以下かつ軒高9m以下 |
改正法 | 階数3以下かつ高さ16m以下 |
また、多様なニーズを背景として、大空間を有する建築物が増加していることを受け、2階以下の木造建築物で構造計算が必要となる規模が引き下げられます。
2階以下の木造建築物で構造計算が必要となる規模 | |
---|---|
現行法 | 延べ面積500㎡超 |
改正法 | 延べ面積300㎡超 |
大規模木造建築物における防火規定変更
2025年改正建築基準法では、3000㎡超の大規模建築物については、構造部分の木材をそのまま見せる「あらわし」による設計が可能な新たな構造方法が導入されます。

これにより、内装や外観で木材の美しさを生かした建築がしやすくなり、大規模建築物の木造化の促進や多様なデザインの実現が期待されています。
一方で、現行法では、3000㎡超の大規模建築物を木造とする場合は、壁・柱などを耐火構造とするか、3000㎡ごとに耐火構造体で区画することが必要です(第21条第2項)。たとえば、前者の工法には、壁や柱などを石こうボードで全面的に覆う方法があります。
しかし、これらの防火規定は、利用者が木の良さを実感しづらかったり、設計上の制約が大きかったりしたことから、改正されることになりました。
中層建築物に適用される耐火性能基準の緩和
2025年改正建築基準法では、中層建築物の木材利用促進を目的に、木造の中層建築物に適用される耐火性能基準が緩和されます。具体的には、階数5以上9以下の建築物の最下層については、90分間の耐火性能があれば木造構造の建築が可能になります。
中層建築物に適用される耐火性能基準 | |
---|---|
現行法 | 階数5の建築物と階数14の建築物の最下層に関しては同水準の耐火性能を要求 |
改正法 | 階数5以上9以下の建築物の最下層については90分間耐火性能で設計可能 |
既存不適格建築物に対する現行基準の一部免除
2025年改正建築基準法では、古い既存住宅や空き家の省エネ化・長寿命化を促す目的で、一部の既存不適格建築物(*)に対する現行基準を適用しない免除規定が盛り込まれます。
既存不適格建築物に対する現行基準の適用の有無 | |
---|---|
現行法 | 現行基準が適用され、同建築物の増改築、大規模修繕などでも建築確認申請が必要 |
改正法 | 市街地環境への影響が増大しないと認められる大規模の修繕・大規模の模様替えをする場合には現行基準を適用しない(例:敷地が建築基準法上の道路とは接していないが、その他の利用可能な道路と接している建物、通行上支障がないひさしが道路内に出ている建物) |

現行法では、接道義務違反の土地は再建築できません。しかし、今回の法改正により、接道義務違反の土地でも大規模リノベーションが可能となり、古い既存住宅の再利用促進が期待されています。
*既存不適格建物:現存する建築物のうち、建築時点の法令では合法だったものの、その後に法改正があり、現時点で適用される法令で不適格な部分が生じた建築物のこと

2025年改正建築基準法の施行には、2つの社会的背景が影響しています。
- 省エネ対策の徹底
- 木材利用の促進
なぜ建築基準法が改正されるのか、その背景を理解するうえで役に立ちますので、ぜひ参考にしてください。
省エネ対策の徹底

2025年改正建築基準法が施行される背景には、政府による建築物分野での省エネ対策の徹底があります。
事実、政府は2025年カーボンニュートラルと2030年度温室効果ガス46%削減(2013年度比)の実現に向け、エネルギー消費の約3割を占める建築物分野での省エネ対策を加速させる方針を掲げています。
この方針を踏まえ、政府は、建築物省エネ法と住宅金融支援機構法、建築基準法の3法を改正する計画を進めているのです。そうしたなか、住宅・建築物のストックの省エネ改修を図る施策の1つである改正建築基準法が今回、施行期日を迎えることになりました。
木材利用の促進

2025年改正建築基準法が施行される背景には、木材需要の約4割を占める建築物分野での木材利用の促進があります。
木材の利用促進も、カーボンニュートラル達成や、温室効果ガス削減に向けた施策の1つ。つまり、政府は、建築基準法改正によって建築物の木造化が進めば、省エネ対策として大きな効果が見込めると期待しているのです。
日本の建築着工床面積の木造率は4割弱。まだまだ木造化を図る余地があります。その点、建築物の木造化を通じた省エネ対策の推進は、一定の合理性がある施策だといえます。

ここからは、改正建築基準法が改正されるメリット・デメリットについて解説します。
2025年改正建築基準法が改正されるメリット
2025年改正建築基準法の施行により、建築構造の安全性向上が期待されます。4号特例の縮小により、構造の安全性審査の対象となる建築物が増えるためです。
また、省エネ基準の審査を受ける建築物も増えるため、省エネ対策の推進でも好影響がおよぶと考えられます。
2025年改正建築基準法が改正されるデメリット
4号特例の縮小や構造計算が必要な木造建築物の規模変更により、新築・増築・改築といった各種建築工事のコストや時間の増加が予想されます。
事実、建築確認申請とは別に受ける必要がある構造計算適合性判定に先立つ、構造計算書の作成には30万円〜50万円程度かかります。つまり、一定規模の木造建築物に建築工事を施す施主は法改正前と比べて多くのコストを負担しなければなりません。
また確認検査機関での適合性判定は7〜14日程度を要することから、施工業者においても、施工期間の長期化が懸念されます。

2025年改正建築基準法の施行は、不動産投資業界に次の3つの影響を与えると考えられます。
- 建築コストの上昇
- 使用制限対象の建築物が増える
- 大規模なリフォーム・リノベーションを行う場合には建築確認申請が必要
いずれも大規模なリフォーム・リノベーションや建て替えを検討する不動産オーナーにとって大きな変化ですので、ぜひ参考にしてください。
建築コストの上昇
4号特例の縮小に伴い、従来簡略化されていた図書や構造計算書が必要なケースが増えることで、これまで必要のなかった設計者に依頼する委託料が増大します。加えて、審査側も審査する項目が増えるため、建築計画の特性によって変動する確認加算手数料が上がるでしょう。
建築コストが上昇するのは、事務的経費だけではありません。4号特例の縮小により、これまで対象外だった築古の収益物件もリフォーム・リノベーション工事を実施する際に省エネ基準の審査対象となります。そのため、省エネ基準に適合するための工事費用が百万円単位で必要になるケースがあるでしょう。
使用制限対象の建築物が増える
4号特例の縮小により、これまで対象外だった建築物が使用制限の対象となり、完了検査済証が交付されるまで建物が使用できなくなる可能性があります。
現行法は、特定の工事を含む建築物を対象に、検査済証の交付を受ける前の建物の使用を禁じています。具体的には、新築や増築、改築、移転、大規模な修繕、大規模な模様替えに加え、既存の部分に建築基準法施行令第13条で定める避難施設に関する工事を含む、建築基準法第6条第1項第1号から第3号に該当する建築物が、使用制限の対象です。
ただし、4号特例が適用された建築物はいかなる場合でも完了検査前までの使用制限にかかりませんでした。それでも、改正法の施行後は4号特例の消滅によって多くの物件が使用制限の対象となり、違反すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されることになります。
大規模なリフォーム・リノベーションを行う場合には建築確認申請が必要
4号特例の縮小により、改正後の新2号建築物については、大規模リフォームやリノベーションを行う場合に建築確認申請が必要となります。そのため、申請手続きにかかる既存建築物の法規チェックや図書の作成などが新たに必要となり、これまでよりも時間やコストがかかるでしょう。

2025年4月に訪れるのは、改正建築基準法の施行期日だけではありません。改正建築物省エネ法の施行期日も同時に施行されます。
改正建築物省エネ法は建築基準法との関連性が強いため、ぜひ参考にしてください。
改正法のポイントは「省エネ基準適合」の義務化
2025年改正建築物省エネ法のポイントは、すべての新築住宅・新築非住宅に省エネ基準適合義務が課されることです。

省エネ基準とは、建築物が備えるべき省エネ性能の確保のために必要な建築物の構造と設備に関する基準。一次エネルギー消費量基準(*)と外皮基準(*)から構成されます。
図からお分かりのように、現行法では、すべての建築物が省エネ基準の対象となるわけではありません。国交省は、「非住宅」かつ300㎡以上の「中規模・大規模建築物」に限り、一次エネルギー消費量基準が基準値以下になるよう義務付けています。
しかし、改正法が施行されれば、省エネ基準適合義務の範囲が大幅に拡大され、これまで説明・届出義務に留まっていた建築物も新たに適合義務の対象となります。義務化の対象となる建築物については、建築確認手続きの際に省エネ基準への適合性審査が実施され、基準を満たさなければ着工できません。
一次エネルギー消費量基準:空調・換気・照明・給湯などのエネルギー消費量から太陽光発電設備などによる創出エネルギーを差し引いたもの
外皮基準:外壁や窓、床などの外皮の表面積あたりの熱の損失量(外皮平均熱貫流率など)
省エネ基準適合義務化が不動産投資業界に与える影響
省エネ基準適合義務化が不動産投資業界に与える影響については、建築コストの上昇が挙げられます。省エネ基準に適合させるために必要となる追加的コストが発生するためです。
国交省は、省エネ基準に適合させるために必要となる追加コストについて、次のように試算しています。

試算表をみるとお分かりのとおり、省エネ基準に適合させるうえでは、建設費の約1.3%〜約4.0%の追加的コストが発生すると予想されます。
したがって、改正法施行後は建設費のコストアップが避けられないでしょう。結果、不動産投資家が新規に物件を取得する際の初期費用が上がり、新築物件の利回りが低下するおそれがあります。
2025年改正建築基準法の施行は、4号特例の縮小に伴って建築コストの上昇や建築物の使用制限の対象拡大など、不動産投資業界に広範な影響を与えるとされます。
影響を総合的に勘案すると、コスト面では、マイナスの影響が大きいといえるでしょう。しかし、改正法の施行は、これまで以上に安全性を担保した物件を入居者に提供できる好機でもあります。つまり、不動産投資家の皆様は、今回の法改正を賃貸サービスを向上させられる好機と捉え、然るべき準備に取り掛かることをおすすめします。

「お客さまの利益のために努力することが、自らの利益につながる」という考え方ですので、押し売りをはじめとしたこちら都合のアプローチは一切行っていません。
「お客さまの利益のために努力することが、自らの利益につながる」という考え方ですので、押し売りをはじめとしたこちら都合のアプローチは一切行っていません。

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