区分所有法の改正案とは? 現行法の課題や改正の背景を解説! | 全国の不動産投資・収益物件|株式会社リタ不動産
区分所有法の改正案とは? 現行法の課題や改正の背景を解説!
2025-01-24

マンションの老朽化が進む昨今、マンションの建て替えや修繕をスムーズにすべく区分所有法の改正が検討されています。
既出の改正案には、区分所有建物の管理に特化した財産管理制度の創設や、建て替え決議の多数決要件の緩和などが盛り込まれていますが、その詳細について知らない方も少なくありません。
そこで、本記事では、区分所有法の改正内容について解説します。現行法が抱える課題や、改正の背景についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
区分所有法とは、マンションや団地など、区分所有建物の管理や権利、利用方法などの基本的なルールについて定めた法律です。正式名称を「建物の区分所有等に関する法律」といいます。
一戸建ての建物は、原則的に1つの建物につき1つの所有権しかありません。そのため、一戸建てに関しては、民法が優先的に適用されます。

一方で、区分所有建物では、それぞれの所有者が有し、区分所有権の対象となる「専有部分」と、区分所有者の共用に供されるエレベーターやエントランスなどの「共用部分」に区別されます。
それでも、専有部分の所有権は共用部分と完全に分離しているわけではありません。そのため、建物全体の管理や修繕、建て替えなどの重要な事項については、すべての所有者の意思を確認したうえで、反映させる必要があります。
このように、区分所有建物では、権利関係が複雑です。したがって、複数の人や世帯が暮らす区分所有建物を円滑に維持・管理・再生するため、民法の特別法として、区分所有法が1962年に制定されました。
現行の区分所有法は次のような課題を抱えています。

- 現行の多数決要件では住民間の合意形成が難しい
- マンションの建て替えを推進できていない
- 深刻な修繕積立金の不足を招いている
後者2つについては、法律上の合意形成の難しさに端を発する課題ですが、ぜひ参考にしてください。
現行の決議要件では住民間の合意形成が難しい
区分所有法では、区分所有建物の共用部分の管理や著しい変更、建て替えなどを決定するための決議要件が定められています。現行法における決議要件は次のとおりです。
決議要件 | 決議の内容 |
---|---|
各5分の1以上 | 集会の招集 |
各過半数(普通決議) | 共用部分の管理や管理者(役員等)の選任・解任など |
各4分の3以上(特別決議) | 共用部分の著しい変更や管理規約の設定・変更・廃止など |
各5分の4以上 | 建て替え |
しかし、要件の充足が容易ではない現行の決議要件により、高齢者や、投資目的とした外国人の所有者、非居住者が多いマンションでは住民間の合意形成が難航しているとされます。
マンションの建て替えを推進できていない

引用:国土交通省「マンション建替え等の実施状況」
現行法は厳しい決議要件により、住民間の合意形成を難しくさせていることから、マンションの建て替えを推進できていません。
実際、国土交通省によれば、2024年に実施されたマンションの建て替えの件数は、308件にすぎません(2024年4月1月時点)。2014年の改正マンション建替円滑化法の施行により、マンション敷地売却制度や容積率の緩和の特例が創設され、同法に基づく建て替えやマンション敷地売却などは、年間で10件ほどしか増えていないのが実情です。
深刻な修繕積立金の不足を招いている

引用:国土交通省「管理・修繕に関するテーマの検討」
現行法では、修繕積立金の引き上げに普通決議、引き上げに伴う修繕計画や管理規約の改正に特別決議がそれぞれ必要です。つまり、長期修繕計画の達成に向けてはいくつかの決議を要することから、現行法は深刻な修繕積立金の不足を招いているとされています。
実際、国土交通省によれば、長期修繕計画を定めて修繕積立金を積み立てているマンションのうち、「現在の修繕積立金の残高が、長期修繕計画の予定積立残高に対して不足していない」と回答したマンションは、33.8%に留まります。一方で、「現在の修繕積立金の残高が計画に対して不足している」と回答したマンションは34.8%で、「不足していない」と回答したマンションを上回っているのです。
区分所有法の改正案のポイントは、「区分所有建物の管理の円滑化」と「区分所有建物の再生の円滑化」に大別されます。

それを踏まえ、ここからは、改正案のポイントについて解説します。
区分所有建物の管理の円滑化を図る方策
区分所有建物の管理の円滑化を図る方策については、主に次の3つの骨子に分けられます。
- 集会の決議一般を円滑化するための仕組み
- 共有部分の変更決議を円滑化するための仕組み
- 区分所有建物の管理に特化した財産管理制度
集会の決議一般を円滑化するための仕組み
この骨子に基づく施策では、区分所有者や管理者などが裁判所に対し、所在等不明区分所有者とその議決権を決議の母数から除外する仕組みが創設されます。
現行法では、総会決議は、法律や規約の制約ない限り、区分所有者とその議決権が分母となり、決議に対する賛成票を分子として決します。しかし、所在等不明区分所有者は決議に反対する者として扱われていたため、決議要件の充足を阻害していました。そこで、管理組合や管理人などから請求が合った際に、裁判所の判断で所在等不明区分者を決議の母数から除外する仕組みが創設されました。
また、この方策では、出席者の多数決による決議を可能とする仕組みが設けられる予定です。建て替えをはじめとする区分所有権の処分を伴う決議は対象外ですが、普通決議事項や管理規約の変更などで可能になるため、管理組合の運営が円滑になると考えられます。
共有部分の変更決議を円滑化するための仕組み
この骨子に基づく施策では、外壁の崩落をはじめ他人の権利などが侵害される恐れがある場合の共用部分の変更や、バリアフリー基準の適合に向けた変更といった共用部分の変更決議の要件が緩和されます。
現行法では、共用部分の変更決議の多数決要件(4分の3)を満たすことは容易ではなく、必要な工事を迅速に行えないことが課題になっていました。そこで、必要な共用部分の変更を迅速化するため、変更決議の要件が緩和される格好です。
区分所有建物の管理に特化した財産管理制度
この骨子に基づく施策では、区分所有建物の管理に特化した形での財産管理制度が創設されます。
具体的に同制度は、利害関係者が、所有者が不明な専有部分や、管理不全状態にある専有部分・共有部分に対して裁判所に申し立てると、裁判所が管理人を選出し管理を命ずる仕組みです。既存の不在者財産管理制度(民法25条)に代わる制度として、不在者に変わる管理人による適切な管理の推進が期待されています。
区分所有建物の再生の円滑化を図る方策
区分所有建物の再生の円滑化を図る方策については、主に次の3つの骨子に分けられます。
- 建て替えを円滑化するための仕組み
- 区分所有関係の解消・再生のための仕組み
- 被災区分所有建物の再生の円滑化を図る仕組み
建て替えを円滑化するための仕組み
この骨子に基づく施策では、区分所有建物が耐震性の不足や火災に対する安全性の不足など、次の5つの事由に該当する場合については、建て替え決議の多数決要件が従来の「5分の4以上」から「4分の3以上」に緩和されます。
- 耐震性の不足
- 火災に対する安全性の不足
- 外壁などの崩落により周辺に危害が生ずるおそれ
- 給排水管などの腐食や劣化などにより著しく衛生上有害となるおそれ
- バリアフリー基準への不適合
多数決要件の緩和のほかに、建て替え決議がされた場合の賃借権を消滅させる仕組みが導入。この仕組みにより、建て替え決議後に所在等不明区分所有者が所有する専有部分の賃借権が消滅され、建て替え工事が円滑に実施されます。
区分所有関係の解消・再生のための新たな仕組み
この骨子に基づく施策では、多数決による一括売却や取壊しなどを可能とする仕組みが導入されます。
現行法では、建物・敷地一括売却や建物の取壊しなどを行うには、区分所有者全員の同意が必要であり、建物・敷地一括売却や建物の取壊しなどが事実上困難でした。今回の多数決制度の導入により、マンションの流動化や建て直しの推進が期待されます。
このほかに、建て替えと同等の多数決による一棟リノベーション工事を可能にする仕組みが導入されます。
一棟リノベーション工事は、アパート・マンションなどを一棟まるごと新しくすることです。同工事も、区分所有者全員の同意が必要で、事実上困難になっていることから、建物・敷地一括売却や建物の取壊しと同様に、多数決制度が導入されます。
被災区分所有建物の再生の円滑化を図る方策
この骨子に基づく施策では、被災した区分所有建物の建て替え決議にかかる多数決要件が現行の「5分の4以上」から「4分3以上」へと緩和されます。被災区分所有建物の変更決議や復旧決議の多数決要件(4分の3以上)もあわせて検討される予定です。
この骨子で実施される施策は、建て替え決議にかかる多数決要件の緩和だけではありません。被災した区分所有建物の建物敷地売却決議の決議可能期間が現行の「1年以内」から「3年以内」に延長され、再延長もできるようになります。

区分所有法改正には、次の3つのような背景があります。
- 高経年マンションの増加予測
- 区分所有者の高齢化・非居住化
- 空き家や所在不明の区分所有者の増加
これらは不動産市場にまつわる課題であると同時に、不動産価値を予測するうえでの指標になるため、ぜひ参考にしてください。
高経年マンションの増加予測

引用:国土交通省「マンションを取り巻く現状について」
区分所有法改正の背景には、築40年以上が経過する高経年マンションストックの増加予測があります。
実際、国土交通省によれば、2021年末時点で115.6万戸の高経年マンションは10年後の2031年末に2.2倍の249.1万戸、20年後の2041年末に3.7倍の425.4万戸に増える見込みです。グラフをご覧のとおり、高経年マンションは加速度的に増える見込みで、マンションの老朽化問題は一層深刻化すると考えられています。
区分所有者の高齢化・非居住化

引用:国土交通省「マンションを取り巻く現状について」
高経年マンションでの区分所有者の高齢化・非居住化も、区分所有法改正の要因の1つです。
事実、総務省統計局の2018年度住宅・土地統計調査によれば、60歳以上のみで構成される世帯の割合は築40年超のマンションで48%、築30〜39年で44%に上ります。
区分所有者の高齢化が進むマンションでは、管理組合の役員の担い手不足や総会運営、集会の議決が困難といった課題を抱えているところも少なくありません。区分所有建物の高経年化と住民の高齢化は、あわせて「マンションの2つの老い」といわれ、社会問題化しています。
空き家や所在不明の区分所有者の増加
空き家や所有不明の区分所有者の増加も区分所有法の改正を後押ししたとされます。前述のとおり、現行法では、総会決議において空き家の所有者を含む所在等不明区分所有者は決議に反対する者として扱われ、決議要件の充足を阻害していたためです。
統計上の空き家や所在不明の区分所有者の増加は深刻です。実際、2018年度住宅・土地統計調査によれば、1991年以降に完成したマンションで、10%以上の空き家がある建物は全体の約34%に上ります。
また、国土交通省の2018年度マンション総合調査によれば、所在不明・連絡不明の戸数割合は2000年〜2009年が19.1%なのに対し、1979年以前は51.1%を占有。つまり、高経年マンションほど所在不明・連絡不明の所有者の問題が深刻化しています。
区分所有法改正が不動産投資業界にもたらす影響は、功罪両面があると考えられます。
たとえば、法改正を受けてマンションが建て替えられれば、不動産オーナーは建て替え前よりも高額な賃料を得られるため、利回りの向上が期待されます。また建て替え後の収益物件の不動産価値は建て替え前よりも向上が予想され、売却する場合は当初の購入価格との差額で利益を得られる可能性があります。

しかし、建て替えはメリットばかりではありません。建て替えにより追加費用が生じるほか、建て替え工事中の数年間は賃料を得られない可能性があります。また一棟マンションの不動産オーナーは立ち退き料を含めた、賃借人との交渉が負担となるでしょう。
このように、区分所有法の改正には、メリット・デメリットの両方が存在します。ただし、区分所有建物を適正に維持・管理しやすくなるといった部分については確実にプラスの効果が見込めるでしょう。
区分所有法改正によって建て替えや修繕がスムーズになれば、マンションの資産価値の維持や居住環境の改善が期待されます。
マンションの資産価値の維持や居住環境の改善が図られれば、収益物件の高寿命化にもつながります。この意味で、法改正前に失われていた投資機会が、物件の高寿命化により新たに創出される可能性もあるといえるでしょう。
これらを鑑みると、区分所有法改正への期待は大きいといえます。具体的な改正時期は決まっていませんが、動向に注視しましょう。

「お客さまの利益のために努力することが、自らの利益につながる」という考え方ですので、押し売りをはじめとしたこちら都合のアプローチは一切行っていません。
「お客さまの利益のために努力することが、自らの利益につながる」という考え方ですので、押し売りをはじめとしたこちら都合のアプローチは一切行っていません。

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